地域通訳案内士の活躍に期待 インバウンド受け入れ態勢強化

地域通訳案内士らのスキルアップを図るため、奄美5島に外国人を招いて行われたFAMトリップ=2020年2月、奄美大島

  「奄美・沖縄」の世界自然遺産登録が目前に迫り、観光需要の回復にも期待が高まる中、外国語で観光案内を行う「奄美群島地域通訳案内士」の活躍に注目が集まっている。4月1日現在、群島内の地域通訳案内士は113人(英語86人、中国語27人)。育成に取り組む奄美群島広域事務組合は、2023年度までに韓国語を加えた3カ国語計186人に増やす計画で、新型コロナウイルスの収束後に急増が予想されるインバウンド(訪日外国人客)の受け入れ態勢強化を図る。

 

 クルーズ船寄港やLCC(格安航空会社)就航などによる外国人観光客の増加を見据え、奄美では14年3月改正の奄美群島振興開発特別措置法(奄振法)で奄美地域特例の通訳案内士制度を創設。その後、18年1月に改正通訳案内士法が施行されたことから、研修を経て修了試験に合格し、登録手続きを行えば、特例通訳案内士ではなく地域通訳案内士として通訳ガイドの活動ができるようになった。

 

 多様化するガイドニーズへの対応や通訳案内士らのスキルアップを図るため、同組合は18、19年度の2カ年にわたり、「奄美群島育成人材フォローアップ事業」を企画。その一環で、外国人を招いて現地を視察してもらうツアー「FAMトリップ」を奄美5島で実施した。各島ごとに滞在型観光メニューを用意し、現地の通訳案内士が認定エコツアーガイドと一緒に外国人を案内した。ガイドの説明を通訳案内士が訳して外国人に伝えるのが基本的なコミュニケーションの流れ。自然や文化に関連した通訳では専門的な用語の訳に苦戦したり、ガイドとの連携がうまくいかず説明が曖昧な形で終わってしまうなど課題が浮き彫りになった。

 

 20年度は新たな体験ツアーの創出などを目的に検討会や島内在住の外国人向けモニターツアーを実施するなどして、ガイドと通訳案内士のさらなる連携強化を図った。

 

 育成に向けた取り組みが進む一方、通訳案内士が実際に活躍できる場が少ないとの問題もある。海や森といったフィールドで認定ガイドが報酬を得て活動しているのに対し、通訳案内をなりわいとする人はほとんどいないのが現状だ。同組合の担当者は「昨年から新型コロナの影響で大型クルーズ船の寄港がなくなるなど、通訳案内の実践の場が減っている。今後、働く場を作っていくためには通訳案内士の存在をより広く周知していく必要がある」と話す。

 

 奄美の経済界では、世界自然遺産登録効果によってコロナ収束後に外国人観光客の群島への入り込みが急増するとの見方が強い。それに伴って通訳案内士の必要性も増すと予想され、英語などでのガイドを希望する外国人と地元の通訳案内士をマッチングする仕組みづくりは重要になる。

 

 沖永良部島では18年、「おきのえらぶ通訳ガイド協会」が有志によって設立された。地域貢献や島ならではのおもてなしの創造などを活動方針に掲げ、島内の地域通訳案内士7人(英語5人、中国語2人)で活動中。コロナ禍で外国人の来島が見込めないため、思うような活動はできていないが、公民館講座の講師や島内宿泊施設の館内案内を英訳する業務などに取り組んでいる。

 

 同会の有川晶子代表は「コロナ禍の今を準備期間と捉え、新たな観光ツアーを考えながらホームページの作成や情報発信に力を入れている。メンバーにはそれぞれ本業があり、通訳案内士の活動は副業的な位置付け。地域通訳案内士という仕事に子どもたちが興味を持ち、将来島に戻って来るきっかけにもなるよう、活動を通して地位確立を目指していきたい」と語った。