群島の海の民俗を解説 「ほこらしゃ奄美in瀬戸内」

専門家5人が奄美の海の民俗について語った「ほこらしゃ奄美in瀬戸内」講座=11日、瀬戸内町立図書館・郷土館

 専門家5人が奄美群島の海の民俗について語る講座「ほこらしゃ奄美in瀬戸内」が11日、瀬戸内町立図書館・郷土館であった。講師の1人で鹿児島県歴史・美術センター黎明館の小野恭一学芸員は、イカ釣りなどで使用される漁具・餌木(えぎ)に着目。奄美などで古くから使われていた餌木が江戸時代末期ごろに県本土に伝わったと考察し、「現在はルアーフィッシングの一種『エギング』で全国で知られており、奄美の素晴らしい文化の一つ」などと語った。

 

 講座は黎明館で9月30日~11月7日に開かれる第60回記念黎明館企画特別展「ほこらしゃ奄美~海と山の織りなすシマの世界」の関連講座。町内外から約50人が参加した。

 

 小野学芸員は、餌木の起源について「種子島や屋久島の漁師が生み出したものが江戸末期ごろに鹿児島県本土に伝わったとする説もあるが、ルーツははっきりしていない」と説明。

 

 県本土で収集された餌木の時代ごとの形の移り変わりを示した上で▽奄美大島で1851~52年ごろには薩摩の初期型に近い餌木が使用されていた▽長崎県の五島列島では中国から伝わったという説がある―ことなどを紹介し、「餌木のルーツは南西諸島や東南アジア、中国など、より広い視野で検討する必要がある」と語った。

 

 瀬戸内町立図書館・郷土館の町健次郎学芸員は、同町に伝わる「旧暦の三月三日(サンガツサンチ)に海に行かなければカラスになる」という伝承を、民俗学の視点から考察。

 

 ▽三月節句は旧暦3月の最初の巳の日に行う中国の厄払いの儀礼に由来する▽奄美ではカラスやフクロウ、ガジュマルのように、鳥や木などその種の一般的な姿から逸脱したものに悪いイメージがあった▽奄美・沖縄では浜辺に厄を浄化する力があると信じられていた―ことから、「厄の隠喩としてカラスが用いられたのではないか」と述べた。

 

 奄美市立奄美博物館前館長の久伸博氏は、幕末期の奄美大島について記した地誌「南島雑話」から、当時の漁や海にまつわる祭事について解説。

 

 宇検村教育委員会の渡聡子学芸員は焼内湾をテーマに、同村で現在も続いている漁や年中行事などから人と海のかかわりについて語った。

 

 奄美海洋生物研究会の水野康次郎副会長は瀬戸内町で現在も行われる「イザリ」と、廃れてしまった「カキ(垣漁)」を比較し、両者の違いから文化や技術の継承方法について考えた。

 講座の開催には公益財団法人日本海事科学振興財団(船の科学館)の「海の学びミュージアムサポート事業」を活用した。講座の合間には、小野学芸員が会場の資料館で展示している餌木について来場者に詳しく解説する場面もあった。

時代ごとの餌木の特徴を解説する小野学芸員=11日、瀬戸内町立図書館・郷土館