ふき替え技術受け継ぐ職人 龍郷の大工・中村博志さん 「先人の仕事、残したい」

2018年12月28日

地域

協力して高倉のふき替え作業を進める中村さんら=25日、龍郷町浦

協力して高倉のふき替え作業を進める中村さんら=25日、龍郷町浦

龍郷職人が高倉葺き替え・上から 来年3月の完成を目指す「とおしめ公園」(龍郷町浦)で、高倉のふき替え作業が進んでいる。指揮するのは同町の大工・中村博志さん(54)。かやぶき屋根のふき替えができる人は少なくなったが、高倉の保存のためにふき替えは欠かせない作業。中村さんは「昔の人の仕事は大工として見習うことも多く、残していかなければいけない文化。ゆくゆくは自分で建てられるようにもなりたい」と語り、高倉の継承に積極的に取り組んでいる。  (榊原希望)

 

 作業に当たるのは中村さんと共に島内各地で高倉のふき替えを行なってきた20代~80代の6人。ふき替えるのは1992年に復元された8本柱の高倉1棟で、同公園にはこのほかに町内の民間から寄贈された国指定有形文化財の高倉3棟がある。

 

 高倉のふき替え作業にはふき方、締め方、針刺し屋、下に積んだかやを上げる人(マエドリ)とそれぞれ役割があり、4者の呼吸を合わせることで丈夫なかやぶき屋根が完成する。

 今回は島内に自生するススキ類と、茎の細いマカヤ(チガヤ)約2千束を使用。らせん状に組み上げるかやの厚さを均一にするのが難しく、特に「イッキャ」と呼ばれる屋根の頂点部分が腕の見せ所という。

 

 中村さんは「低過ぎても高過ぎてもだめ。水の流れが片寄ると屋根を早く痛める原因にもなる」と語る。高倉の屋根は水を溜めないように急勾配に作られるため、足場が不安定な中での作業にも気を使う。

 

 中村さんによると、目の細かいマカヤを密集させた上に葉の広いススキを重ねることで屋根は水を通しにくくなり、雨に強くなる。「マカヤが痛まない限り、今後は上に重ねたススキの取り替えだけで済む」。中村さんが父繁則さん(83)と、その師で8本柱高倉の建築に携わった故・奥田純夫さんから教わった先人の知恵だ。

 

 一方、島内ではマカヤが少なくなり、今後は奄美大島全域でふき替えのための材料が不足する恐れがあるという。「育てるとしたら今よりも高倉の保存コストがかさむ。技術者不足と同じく、今後どうするのかちゃんと考えていかないと」。未来の奄美を見据え、職人は警鐘を鳴らす。

 

 来年は大和村の高倉群のふき替えがあり、中村さんたちが担当する予定。作業には同村の住民を加え、ゆくゆくは村民が自分たちで村内の高倉を保存していけるよう支援するという。

 高倉は先人の知恵が詰まった奄美を代表する建築遺産だ。今後の継承のあり方が問われている。

 

 

 

 

 

 

 

【編注】

写真は2枚を組み合わせてください

中村博志(なかむら・ひろし)、繁則(しげのり)、奥田純夫(おくだ・すみお)