世界自然遺産シンポ 龍郷町

2019年10月04日

世界自然遺産

スピーチする麓さん=2日、龍郷町

スピーチする麓さん=2日、龍郷町

 県主催の第2回奄美世界自然遺産推進シンポジウムが2日、龍郷町のりゅうゆう館であった。伝統文化の継承・発信をテーマにスピーチやパネルディスカッションがあり、奄美の将来を見据えた継承・発信の在り方を探った。パネリストらから「島内外の人が一緒に取り組める仕組みが必要」「子どもへの教育が大事」などの意見があり、若い世代や島外の人が気軽に参加できる体験活動や郷土教育の充実を求める声が上がった。

 

 シンポジウムは来年夏を見込む奄美・沖縄の世界自然遺産登録を見据え、地域の機運醸成を図る目的で開催。自然や文化、観光、屋久島・沖縄との連携をテーマに奄美大島で2019年度に全4回の開催を計画している。

 

 内閣府地域活性化伝道師でNPO法人ディ!代表理事の麓憲吾さん(47)=奄美市名瀬=がオープニングスピーチを行った。奄美の伝統文化の継承・発信のため、島に生まれたことに誇りを持ち、習得した技術や知識を島で生かしたいと考える価値観「島心」を地域の中で確立する重要性を強調した。

 

 パネルディスカッションは麓さんをコーディネーターに、窪田圭喜さん(秋名アラセツ行事保存会会長)、村上裕希さん(一般社団法人E‘more秋名代表理事)、西平せれなさん(西平酒造㈱杜氏)、前田圭祐さん(伝統工芸士)、成瀬茉倫さん(龍郷町出身大学生)が意見交換した。

 

窪田さんは集落の子育て世代が八月踊りを定期的に練習し、集落行事が盛り上がっていると報告。「歌や踊りが間違っていたら、憎まれてもいいから間違いを正すのも自分の役目だ」と話した。村上さんは集落の暮らしぶりを継承するため、集落体験ツアーなど観光産業を取り入れることを提案。「観光客に伝えるため、住民自身が集落の歴史や文化を学ぶようになる」と述べた。

 

 西平さんは「地元に拠点をつくって奄美黒糖焼酎を発信することに意味がある」とし、9月に開設した名瀬市街地のアンテナショップを紹介。前田さんは40代以下の紬職人が商品開発や小中高生向けの出前授業に力を入れていることを報告し、これらの取り組みを「後継者育成につなげたい」と語った。

 

 成瀬さんは「島唄や地域行事、大島紬、黒糖焼酎といった地域資源は人を引きつける接着剤のような力がある。活用すれば島内外に奄美を盛り上げる人材を集められると思う。その人材を生かすため、大学で島外にいる人が地域貢献できるシステムを研究したい」と語った。

 

 町内外から約300人が来場。西平さんの音楽ライブと戸口子ども会の八月踊りもあり、イベントに花を添えた。

 奄美の将来を見据えた伝統芸能継承・発信の在り方を話し合うパネリスト=2日、龍郷町

奄美の将来を見据えた伝統芸能継承・発信の在り方を話し合うパネリスト=2日、龍郷町