京大に奄美人の遺骨返還求める運動へ

2018年03月04日

地域

遺骨返還運動への取り組みについて説明する(右から)大津氏と原井氏=3日、奄美市名瀬

遺骨返還運動への取り組みについて説明する(右から)大津氏と原井氏=3日、奄美市名瀬

 旧帝国大学の人類学者らが北海道や琉球列島の風葬墓から遺骨を持ち出した問題で奄美大島、喜界島、徳之島からも多数の遺骨が運び出されたとして、奄美市の研究者らが3日、同市名瀬で記者会見し、遺骨を所蔵する京都大学への返還運動を始める考えを示した。3月中に運動推進の連絡協議会を設立するとともに、風葬の習慣があった地域で説明会を開いて住民への遺骨持ち出しの実態周知と情報収集を図る。

 

 返還運動の発起人は、奄美市名瀬のフリーライター原井一郎氏(68)と、民俗研究などに取り組む大津幸夫氏(84)。原井氏らの調査によると、1933~35年、京都帝国大学の研究者らが島から遺骨を持ち去った。喜界島93例、徳之島92例、奄美大島80例の計265例とされ、現在も京都大学の自然人類学研究室に所蔵されているという。

 

 遺骨の持ち出しは民族のルーツ調査などが目的だが、原井、大津両氏は「盗掘に近い手法での収集は、純粋に研究目的だったとしても看過できない多くの問題を含んでいる」と指摘。「祖先の魂の象徴ともいえる遺骨については、全てを返還すべき」として、京都大学に返還を求めるとともに、奄美から多数の遺骨を収集した背景などについても説明を求めていく方針だ。

 

 現地説明会は奄美市笠利町、喜界町、伊仙町で開く予定。島別での推進団体設立も呼び掛ける。

 

 原井氏と大津氏は「まずは、遺骨持ち出しの事実があったことを地元住民に知ってもらい、地域全体での返還運動につなげたい。沖縄や北海道とも連携できれば」と話し、持ち出された地域が分からない遺骨の対応などについては、島別での共同埋葬も含めて今後の検討課題とした。