無縁墳墓388基、全体の16% 5年以上墓参形跡なし 永田墓地 奄美市

2019年08月14日

地域

永田川沿いに広がる市有永田墓地。右手奥が奄美支庁舎側=11日、奄美市名瀬

永田川沿いに広がる市有永田墓地。右手奥が奄美支庁舎側=11日、奄美市名瀬

 奄美市最大規模の市有共同墓地・永田墓地で、5年以上墓参りの形跡が見られず、縁故者との連絡も取れない「無縁墳墓」が、墓地全体の16%となる388基に上ることが分かった(2018年度末現在)。島外に就職し、長年墓参りがされないまま放置され、墓の場所も分からなくなっている本土在住の縁故者も少なくないという。盆を迎えたが、誰も迎えに来てくれない墓が、静かに永田墓地にたたずんでいる。

 

 永田墓地は県大島支庁舎奥の永田川沿いに広がる共同墓地。奄美市環境対策課墓地対策室によると、墓地は民間地に約1600基、市有地に約2400基、計約4千基ある。古くは薩摩藩時代の役人の墓石と見られるものも無縁墳墓として残されている。

 

 登記簿によると、市は市街地の人口増加に伴い、明治、大正、昭和と土地を取得し、墓地を拡充してきた。奄美市有墓地条例では、墓地を利用する場合は市長の許可が必要で、利用権の売買、譲渡、賃与はできない。利用者が死亡したり、継承者がいない場合は現状回復して返還しなければならない。現在、市は使用者から管理料や使用料は徴収していない。

 

 奄美市は1982年以来、20年以上墓地台帳を更新しておらず、2005年、現状を把握するために墓地台帳整備事業に着手。12年には役所内に墓地対策室を設置し、継承や返還手続きを本格化してきた。19年現在、台帳の整備は70%完了しているという。

 

 市は年に2回、実地調査を行い状況を確認。墓参りの形跡が見られない墓には立て札を設置後、縁故者をたどり、状況を確認する文書を送付している。

 

 ところが、縁故者から返信が来ないケースが続出。連絡が取れた場合でも、本土に就職し、墓地返還手続きをしないまま本土の墓へ改装を済ませてしまっている例や、代替わりをして「奄美の祖父母の墓がどこにあるのかも分からない」と言われることもあるという。

 

永田墓地の利用者の登録申請を呼び掛ける立て札=11日、奄美市名瀬

永田墓地の利用者の登録申請を呼び掛ける立て札=11日、奄美市名瀬

 市では立て札設置後、5年以内に申し出がない墓を「無縁墳墓」とみなし、官報に掲載。さらに1年以内に申し出のない墓を「無縁改装公告済」として処分を進めている。

 

 これまで無縁改装公告済みとなった墓は16年度202基、17年度170基、18年度16基で計388基に上る。これとは別に、墓地返還届の申請数は18年度までに約300件。2400基の墓地のうち、墓参りがなされているのは約6割の1500基となっている。

 

 市は今後、現状回復の方法や、無縁遺骨の処分方法、空き地となった墓地の適正利用の在り方について検討する委員会を本年度内に始める予定にしている。

 

 墓地対策室の川口真克室長は「2、3年に一度お墓参りをする方もいるので、調査は慎重に行っている。少しでも無縁墳墓がなくなるよう、返還や継承手続きにご協力いただきたい」と話している。