相撲甚句100年ぶりに里帰り 奄美市名瀬根瀬部で披露 龍郷町秋幾の保存会

2018年06月04日

地域

約100年ぶりに里帰りを果たし、敬老会で披露された相撲甚句

約100年ぶりに里帰りを果たし、敬老会で披露された相撲甚句

 奄美市名瀬の根瀬部から大正時代に龍郷町秋名・幾里(秋幾)地区に伝えられた相撲甚句が100年ぶりに里帰りした。根瀬部では歌い手に恵まれず途絶えたが、秋幾地区では保存会(松田隆宏会長)が結成され伝承されてきた相撲甚句。5月27日の根瀬部敬老会で、秋幾保存会が披露した。

 

 奄美の民俗や文化を紹介した『奄美拾遺集』(林蘇喜男著)によると、根瀬部の相撲甚句が秋幾に伝わったのは1917~18年ごろ。秋幾の相撲愛好家らが根瀬部を訪れて習い、地元ではやらせたとされる。

 

 秋幾でも1940年代後半から一時的に途絶えたが、甚句を聞き知る人々が歌詞をつなぎ合わせて70年代に復活。75年には保存会が結成された。

 

 一方、本家の根瀬部では豊年祭で披露されることもなくなり、秋幾保存会で数年前から「根瀬部の豊年祭で甚句を披露してはどうか」との声が上がっていたという。

 

秋幾相撲甚句保存会のメンバー=5月27日、奄美市名瀬根瀬部

秋幾相撲甚句保存会のメンバー=5月27日、奄美市名瀬根瀬部

 保存会の松田会長(57)ら9人が根瀬部を訪れ、集落の土俵に化粧まわし姿で登場。「そろたや、そろいました。相撲取りそろた。とこうどこいどこい」と甚句を口ずさみながら輪になって踊りを披露すると、詰め掛けた敬老者や住民から大きな拍手が送られた。

 

 敬老会に出席した70代の男性は「相撲甚句といえば小宿などが知られるが、自分の地域でも歌われていたと聞き驚いた。素晴らしい文化を見られて、良かった」。根瀬部の米田正和区長(64)は「自分たちのルーツを確認できたようにも感じる。地域から甚句の復活を望む声が高まるのではないか」と語った。

 

 保存会の松田会長は「秋幾に素晴らしい文化を伝えてくださった根瀬部の皆さんの前で披露でき、うれしい」と話し、両地域の交流促進にも期待した。