群島リポート 罰則なき「ながら運転」

2020年01月17日

地域

罰則なき「ながら運転」による事故を防げるかは、運転者一人ひとりの意識に懸かっている(写真はイメージ)

罰則なき「ながら運転」による事故を防げるかは、運転者一人ひとりの意識に懸かっている(写真はイメージ)

 運転中の携帯電話使用等を厳罰化する改正道交法が昨年12月に施行された。奄美群島では昨年、改正法施行前の11月末までに362件が検挙されたが、その一方で読書や飲食、乳児を抱っこしながらの運転など、行為そのものに罰則規定のない「ながら運転」も複数認知されている。中には脇見運転につながり交通事故を起こしたケースもあり、奄美署は「運転に支障を来す危険な行為」として注意を呼び掛けている。 (西谷卓巳)

 

■事故増加で厳罰化

 

 2000年の道交法一部改正により、運転中の携帯電話使用やカーナビなど画面の注視が禁止された。当初は交通事故を起こした場合にのみ罰則が設けられていたが、04年の法改正で通話や画面注視といった行為自体も処罰の対象となった。

 19年12月には、一部法改正で反則金と違反点数が(普通車では)3倍に引き上げられた。交通事故を起こした場合は免許停止処分とし、懲役刑も重くするなど厳罰化した。

 背景にあるのは、携帯電話使用等による交通事故の増加。警察庁によると、交通事故全体の件数が年々減少する一方、携帯電話使用等による事故は18年に2790件発生し、08年(1299件)から10年間で2倍以上に増えた。

 奄美群島で昨年11月末までに検挙された携帯電話使用等362件を管轄警察署別にみると、▽奄美署205件▽瀬戸内署33件▽徳之島署100件▽沖永良部署24件。奄美署管内では、携帯電話を使用していた運転者自身が負傷する交通人身事故も1件あった。

 

■潜在的「ながら運転」

 

 一方、奄美署管内では携帯電話使用等以外の「ながら運転」も複数認知されている。同署交通課によると、乳児や犬、猫などペットを抱っこしながらのほか、飲食や本、書類を見ながらの運転なども見受けられるという。

 脇見運転やハンドル操作ミスなどにつながれば安全運転義務違反、乳児を抱っこしながらの運転はチャイルドシート着用義務違反に当たるなど、ほかの違反に抵触することはあるが、携帯電話使用等以外の運転中の行為については「ながら運転」として明確な罰則規定が設けられていない。

 同署の竹下直志交通課長は「別の物事に気を取られて飛び出しや赤信号を見落としたり、対向車線にはみ出したりすれば、交通事故につながりかねない。『ほんの一瞬だから』といった発想は非常に危険」と警鐘を鳴らす。

 

■気付いてブレーキ間に合わなかった

 

 徳之島で一昨年、会社員男性の運転する車が道路を横断していた高齢女性をはねて死亡させる事故があった。現場は見通しの良い直線。過失運転致死罪に問われた男性は法廷で「助手席に置いていた飲み物を取ろうとしていた。気付いてブレーキを踏んだが間に合わなかった」と供述し、執行猶予付きの有罪判決を受けた。

 罰則がなくても、人身に危険を及ぼす可能性はある。重要なのは、運転中に行う別の行為が「違反か否か」という以上に「危険か否か」の判断。運転中の携帯使用等厳罰化を機に意識をあらため、ハンドルを握り直したい。