「保護と活用の両立を」 地元団体がルール緩和訴え 金作原国有林

2025年01月15日

世界自然遺産

約5年ぶりに金作原を訪問した奄美の自然を考える会メンバーら=12日、奄美市名瀬(奄美の自然を考える会提供)

世界自然遺産に登録された奄美大島で、自然保護のために導入されている金作原国有林(奄美市名瀬)の利用ルールについて、地元の自然愛好団体から緩和を求める声が上がっている。奄美の自然を考える会の森山力藏会長(79)は「過剰な観光による自然破壊を防ぐための決まりは当然必要だが、島民が地元の自然から遠ざかってしまえば本末転倒だ」と語り、特に児童生徒らへの郷土教育や環境教育への影響を危惧する。

 

金作原は環境への負荷軽減や質の高い自然体験を提供する目的で、2019年2月から▽一般利用者は認定エコツアーガイド(有料)を同伴する▽ガイド車両の利用台数は同時間帯につき8台以下▽利用時間は1回120分以下―などを設定する試行ルールを導入している。

 

奄美の自然を考える会は1986年発足。自然保護の提言や会誌「きょらじま」の発行などのほか、地元の親子連れや一般の愛好者らも参加できる自然観察会を定期的に実施している。希少な草花や樹齢150年以上の亜熱帯常緑高樹を見ることができる金作原観察会は人気が高く毎年2~4回ほど開催していたが、試行ルールの導入以降実施できていない。

 

同会は金作原利用ルールに対して島民の幅広い要求を反映させることを目指し、ルールの内容を検討・決定する奄美大島利用適正化連絡会議と県環境林務部自然保護課奄美世界自然遺産室へ昨年10月1日付で要望書を提出。自然保護・環境教育に実績のある団体へのガイド同伴ルールの緩和や、地元住民による自然利用への配慮などを求めた。

 

そうした中、同会は今後の観察会の方向性を探ろうと12日に金作原国有林を訪問。依頼を受けた認定ガイド3人が同行し、日本自然保護協会の定める自然観察指導員の資格者を含む会員ら12人が参加した。前回の観察会以来約5年ぶりの金作原という人もおり、固有種や希少種の観察を通して教育活動における同国有林の重要性を再認識した。

 

金作原入り口付近にある樹木の名札設置には、奄美の自然を考える会の故大野隼夫初代会長も協力したという。森山会長は「(利用ルール導入以降の)5年の間に地元の多くの子どもたちが金作原を知らないまま島を離れてしまった。長年の活動実績がある会員たちの知識が教育に生かせないのは大きな損失だ」と指摘。「住民に広く問題意識を共有してもらい、島の自然に関心を高めてもらいたい」と話した。