奄美大島いきものがたり

2024年07月18日

○「チッチッ」の正体 ホオグロヤモリ

ホオグロヤモリ

暖かい時期になると、家の中でも聞こえる「チッチッチッ」という鳴き声。その正体はホオグロヤモリである。もともと奄美大島には生息していなかったが、今は島内どの地域を調査しても見かける。民家や街灯、自動販売機などの明かりの周りでよく見られ、我々の生活圏から離れた森林内ではほとんど見られない。

ヤモリは陸上で生活する爬虫類。イモリとヤモリを混同している人もいるが、イモリは両生類なので、分類的にも非常に遠い。

ヤモリを識別するのは難しい。いまだに判断に迷うこともある。ホオグロヤモリの最大の特徴は、尾に突起があること。ただし、一度尾を自切して再生された尾にはこの突起は見られない。色合いも模様も個体差が大きいため識別は難しいが、体の表面に少し大きな鱗が散在しているのも特徴だ。

ヤモリは私たちの生活に身近な生き物。夜のライトに集まる昆虫を待ち伏せして捕食する様子が、エアコンのきいた涼しい部屋からでも、窓越しに観察できる。夏休みの自由研究の題材にもよいのかもしれない。

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○葉の形が由来 ボウラン

 

ボウラン

前回、奄美大島で最も身近な着生ランはカシノキランと紹介した。しかし、より身近な環境にあるのはボウランかもしれない。奄美市名瀬中心地の神社や学校の校庭にも生えている。リュウキュウマツに着生していることが多い。

葉は多肉植物のような厚みがあり、棒状であることから、「ボウラン」と名付けられた。梅雨頃から黄色い花を咲かせ、梅雨が明けて夏真っ盛りになっても、花の一部が残っている。木の幹から斜め上に伸びるように生えていることが多いため、他の着生ランよりも見つけやすい。

植物の識別は非常に難しい。私も元々、植物を観察する身ではなかったため、いまだに花が咲いていなければ識別できないものもたくさんある。しかし、このボウランは、他の植物と見間違えることはない。これから植物を覚えていきたいと考えている人は、まず花が咲いているものや、他の種にはない特徴をもっているものから覚えるとよいだろう。

 

(平城達哉・奄美博物館学芸員)