ノヤギ、生息数の増加確認 奄美大島、世界遺産域にも定着

2022年03月16日

ノヤギ対策について意見交換した生息状況調査報告会=15日、奄美市名瀬

野生化したヤギ(ノヤギ)による採餌で地表面の植物が失われ、土砂流出や斜面崩壊などが発生している奄美大島で15日、県主催のノヤギ生息状況調査報告会があった。海上から調査した結果、生息数が増加していることが分かった。希少植物の多い世界自然遺産登録地域内にも生息域を広げており、対策が急務となっている。県は「より効率的な捕獲手法などを検討していきたい」としている。

 

報告会には県や環境省、市町村、猟友会ら関係機関から約20人が参加。県から調査を委託された県環境技術協会の担当者らが説明した。

 

生息調査は昨年7月に実施。船を使って海上から島全体を8ルートに分けて調査した結果、642頭を確認した。2008年は419頭、14年は477頭だった。

 

マングース用のセンサーカメラや痕跡確認など環境省のデータに基づく調査では、島中央部の世界自然遺産地域内の森林部でノヤギが定着していることが分かった。希少植物への影響が懸念されるという。

 

一方、島全体の捕獲実績は市町村の計画に沿って実施する許可捕獲が19年265頭、20年256頭。個人の裁量で行う狩猟捕獲は19年32頭、20年はわずか10頭だった。

 

同島では10年度に「ノヤギ特区」が認められており、県に狩猟登録をした者ならノヤギを捕獲できる。ただ、法的にはノヤギも「家畜」のヤギとしか認められず、食用にする場合は生け捕りして、と畜場で解体する必要がある。銃で駆除する場合は保健所に許可申請をした上で指定の場所に埋めなくてはならず、食用には利用できない。埋却場は島内に1カ所(奄美市名瀬)しかないという。

 

猟友会の関係者からは「駆除しても個人消費ができないため意欲が湧かない」との意見があったほか、「ノヤギの警戒心が強くなっていてすぐに森林の中へ逃げてしまう。捕獲が難しくなってきている」との報告もあった。