戦跡絵図の顔料分析進む 筑波大、橿考研が共同調査 瀬戸内町西古見砲台跡

2025年01月28日

地域

顔料の分析調査を行う筑波大の松井敏也教授(左)と橿原考古学研究所の河﨑衣美主任研究員=26日、瀬戸内町

保存科学の見地から文化財保護・修復の共同研究を行う筑波大学芸術系の松井敏也教授(56)と奈良県立橿原考古学研究所の河﨑衣美主任研究員(39)らは26、27の両日、瀬戸内町の西古見砲台跡第2観測所内部壁に描かれた絵図の顔料分析調査を実施した。色料に関する調査は2023年に続き2回目で、地元高校生も作業を見学。分析結果は、経年による劣化や退色などが進む絵図の保存、修復に活用される。

 

西古見砲台跡は、安脚場砲台跡と手安弾薬本庫跡とともに「奄美大島要塞(ようさい)跡」として23年3月、国史跡に指定された。西古見の砲台建設は1921(大正10)年に始まり、40(昭和15)年に28センチ榴弾(りゅうだん)砲を配備。現在も砲座4基、砲側庫2基、砲台弾薬庫、観測所2基などが残る。

 

調査に入った第2観測所は、観測用窓の上部壁に大島海峡内の島影が精緻(せいち)に描かれた絵図があり、使われた色料の分析が非破壊の方法で進められている。

 

1回目は蛍光エックス線を用いて色料に含まれる元素を分析。今回は分析機器商社「エス・ティ・ジャパン」協力の下、物質にレーザーを照射して散乱する光を測定する「ラマン分光法」、赤外光を照射して透過または反射した光を測定する「赤外分光法」の2種類の機材を用いて、分子構造や物性を調べた。

 

松井教授は「何の顔料かが分からないことには保護処置の方法も見極められない。前回の分析調査では特徴があまり出ず、今回は違うアプローチを試みたが、その他にも顕微鏡写真や赤外線写真の撮影なども行っており、情報の収集を積み重ねている状況。コンクリート壁の一部が落ちてきている箇所もあるので、躯体処理も含め慎重に進めていきたい」と述べた。

 

西古見集落の活性化に戦争遺跡を活用しようと取り組む、古仁屋高校まちづくり研究所所属の小田風夏さん(17)は「調査の様子を初めて見た。地域の特徴であり、財産でもある文化財を、専門家の方が後世に残すための努力をしてくれていることがうれしく、恵まれていると感じた」と話した。