秋名の夜桜 今年も壮観

2020年02月04日

地域

秋名集落で見ごろを迎えたヒカンザクラの夜桜を見上げる山田祥浩さん=2日、龍郷町秋名

秋名集落で見ごろを迎えたヒカンザクラの夜桜を見上げる山田祥浩さん=2日、龍郷町秋名

 奄美大島で数少ない夜桜を楽しめる名所が、龍郷町秋名集落にある。芦花部トンネルから秋名入り口にかけてのヒカンザクラ並木だ。2日、ライトアップが始まり、16日までの2週間楽しむことができる。今は壮麗な桜並木は25年前、割り箸ほどの小さな苗木を、壮年団が1本1本植樹したのが始まりだった―。

 

 地元の壮年団活動に役立ててほしいと1995年ごろ、秋名集落に10万円の寄付があったのがきっかけ。同集落の初代壮年団長で、元役場収入役だった故成海善文さん(当時90)の篤志だった。当時、壮年団長だった山田祥浩さん(72)は「飲み食いに使えば消えてしまう。記念になることをしよう」と知恵を絞った。同年3月に完成した芦花部トンネル周辺はまだ殺風景。「ここを桜並木にできたら」。団員の中からアイデアが出された。集落内は潮風による塩害もあり、桜の育成に適さない。山が潮風を遮る同トンネル~秋名集落入り口は、立地的にもちょうどよかった。

 

 知り合いのつてを頼り、沖縄からヒカンザクラの苗木を150本購入。11月、団員25人はポットに入った小さな苗木を1本1本、5メートル間隔で植樹していった。周辺の雑草と間違えて伐採されることがないよう、年に2回、慎重に除草作業を行い、丁寧に生育を見守ってきた。

 

 やがて立派な桜並木に成長。最初に咲いたヒカンザクラは成海さんの墓前に供えた。後に60本の苗木も植樹され、今では210本、約1キロメートルに及ぶ。全国に先駆けて春の訪れを告げる、壮観な並木道となり、通る人たちの目を和ませている。

 

 95年当時、植樹作業を取材され、「数年後の花見を夢見る秋名壮年団メンバー」として掲載された町広報紙に、山田さんはこう答えている。「将来的には花見のできる桜並木道として秋名の名所としたい」

 

 壮年団の夢は見事「開花」。4年前からは集落の有志「秋幾農業創成塾」(龍宮省三塾長)が夜間のライトアップを始め、今年で5回目を迎えた。2日夜、点灯式後に大勢の人々が花見を楽しんだ。山田さんは「あの割り箸みたいな小さな苗木が、こんな立派な桜並木になるとは感無量。寄付をしてくれた成海さん、桜の植樹を思いつき、協力してくれた壮年団、みんなのおかげだ」と目を細めて夜桜を見上げた。

 

 夜桜のライトアップは午後6時~9時まで。