嘉徳海岸の道路工事再開 護岸整備、抗議活動で中断 瀬戸内町

2024年07月11日

社会・経済 

作業が再開され、重機が置かれた仮設道路の工事現場。作業員が監視カメラの移設や現場に張り出した木の枝の伐採を行っていた=10日、瀬戸内町嘉徳

県が瀬戸内町の嘉徳海岸で進める浸食対策の護岸整備で、護岸に使用するブロックを海岸へ運ぶための仮設道路の設置作業を県が4日に再開したことが、10日までに分かった。県大島支庁瀬戸内事務所建設課は「1日も早く工事を進め、地域住民の方たちの安全、安心を確保したい」としており、今後現場の測量を行いながら工事を進める。道路の設置作業は2022年2月に開始したが、工事の見直しを求める一部住民らの抗議活動などを受け中断。今年2月にも再開を試みたが重機が作業現場へ入れず、中断したままとなっていた。

 

県によると、4日は現場確認と作業場に生い茂った草の伐採作業などを行った。5~8日の作業はなく、9日は重機を搬入し、伐採した草の搬出、仮設事務所の移設を実施。10日は事務所の通電に向けた作業や現場の監視カメラの移設などを行った。

 

工事再開を巡っては、6月12日に瀬戸内町の鎌田愛人町長と嘉徳集落民代表の栄茂男区長が連名で、護岸の早期完成を求める要望書を奄美市名瀬の県大島支庁へ提出。同18日には事業の見直しなどを求める住民らが、県大島支庁瀬戸内事務所へ住民6人連名の要望書を提出し、協議の場の設置などを求めていた。嘉徳集落には3月末時点で14世帯17人が暮らしている。

 

嘉徳海岸は2014年の台風で砂丘が削られ民有地まで浸食されたとして、集落と町が県へ対策を要望。県は16年度に護岸設置を計画し19年6月に着工したが、工事の見直しを求める住民らの抗議活動を受け、仮設道路の設置作業はほぼ進展していなかった。県の侵食対策事業を巡り、一部住民が県を相手に公金支払い差し止めを求めた訴訟は23年2月、鹿児島地裁が原告側の訴えを退け、今年4月に福岡高裁宮崎支部であった控訴審判決でも原告側の訴えは棄却。原告側は5月、最高裁へ上告している。

 

「奄美の森と川と海岸を守る会」の髙木ジョンマーク代表理事は10日、同集落で「嘉徳には他にない自然景観、魅力がある。集落を守り未来に残すために持続可能なよりよい方法があるはず。住民双方の意見を聞き、調整役となるはずの行政が主体となり工事が進んでしまっている。対話や交渉の場が必要」と話した。