武力攻撃想定し島外避難 初の住民参加、国民保護訓練 沖永良部島
2025年01月29日
社会・経済

バスで和泊港に到着し、ターミナルへ移動する住民ら=28日、和泊町
武力攻撃に至る前段階である「武力攻撃予測事態」の認定を想定し、住民を島外へ避難させる国民保護共同訓練の県内初となる住民参加の実動訓練が28日、和泊、知名の両町で行われた。集落区長ら地元住民約30人が参加し、町職員らの誘導で避難所から和泊港へ移動。県本土へ渡る船舶に乗船する直前までの手順などを確認した。県庁では同島での訓練と連携した図上訓練が行われた。
訓練は消防庁と県、和泊、知名の両町が主催で行い、県警、自衛隊、海上保安庁、民間の船舶・航空会社などオンライン含め約50機関、約200人が参加した。
沖永良部島での住民避難訓練は知名町のおきのえらぶ文化ホールあしびの郷・ちなと和泊町の町防災拠点施設やすらぎ館を避難集合場所として実施。避難所に集合した住民一人ひとりを町職員が名簿を基に本人確認し、バスで和泊港へ移動。港では再度本人確認を行い、船に乗るまでの手順を確認した。
避難所での急患発生対応や、島内への残留を希望する住民を町職員と警察が説得する訓練、病院からの入院患者搬送、特別養護老人ホームからの入所者搬送訓練もあった。
訓練に当たり、和泊・知名の両町はそれぞれ住民の輸送計画や残留者の確認方法を示した「避難実施要領(案)」を策定。両町とも避難の際に介助が必要な要配慮者を最優先とし、小学校区が同じまたは隣接する字単位で住民が移動することなどを基本方針とした。
訓練後の講評で県危機管理防災局の桑原毅彦局長は「県の基本方針案を作成できたこと、船舶・航空会社の協力で14日間で避難完了できる増便運航ダイヤ案を検討できたこと、住民参加により国民保護について理解促進を図れたことが成果と考えている。来年度以降もより実効性が高まるよう訓練を重ねていければ」と述べた。
県は2024年1月に内閣官房、熊本県と合同で武力攻撃予測事態を想定した国民保護実動訓練を1町2島の屋久島町で初めて実施。今回、沖永良部島で実施した理由を「国民保護訓練に当たり奄美群島は重要な地域と認識しており、複数自治体で共に避難する事態が考えられる。1島2町の沖永良部島での訓練を打診したところ、2町から了承を得たため」とした。来年度以降は奄美大島、喜界島、徳之島、与論島で訓練を行う方針を示している。