黒糖焼酎の蔵元視察 海外の蒸留酒の専門家

2020年01月25日

社会・経済 

奄美黒糖焼酎の製造工程を視察する海外の専門家ら=24日、龍郷町の町田酒造

奄美黒糖焼酎の製造工程を視察する海外の専門家ら=24日、龍郷町の町田酒造

 ウイスキーやブランデーなど蒸留酒の専門家が24日、奄美大島を訪れた。龍郷町の町田酒造㈱と奄美市の㈲富田酒造場を視察し、世界中で奄美でしか造られない奄美黒糖焼酎の魅力に触れた。

 

 奄美視察は、焼酎の輸出拡大を目指す県の主催。英国ロンドンに本部を置く世界最大のワインとスピリッツ(蒸留酒)の教育機関「WSET」の講師ら10人が訪れた。県焼酎輸出拡大等プロジェクト小委員会の関係者も同行した。

 

 町田酒造では、同社杜氏の長谷場洋一郎製造開発本部長らの案内で製造工程を見学。原料となる黒糖を溶かす作業や、米こうじと黒糖液を合わせる2次仕込み、蒸留などの工程について説明を受けた。

 

 黒糖と米を原料にした本格焼酎である黒糖焼酎は、奄美群島が日本復帰した1953年に酒税法の特例措置を受けて奄美でだけ製造が認められている。

 

 平島将営業副本部長は「加工品を原料とし、さらにこうじを使用する酒は世界的にも珍しい。島の歴史と文化に根付いた特別な酒」とアピールした。

 

 参加者は①黒糖液と②黒糖液にこうじを加えたばかりの2次仕込み液③もう一度黒糖液を加え、糖分のアルコール化が進んだ蒸留直前の3次仕込み液│の3種を味見したほか、蒸留や熟成の方法などが異なる同社の14銘柄を試飲した。

 

 WSET新規事業担当ディレクターのアントニー・モスさん(46)は「九州の芋・米焼酎はスッキリとした香りの減圧蒸留の方が好みだと思ったが、黒糖焼酎は深く複雑な香りが特徴的で、常圧蒸留の方がより特徴が出ていた」と分析。

 

 「道中奄美の景色や黒糖作りの作業風景も見ることができ、世界でも特別な場所であると感じた」と話した。

 

 蔵元見学の後は奄美市名瀬の集宴会場に移動し、奄美大島、喜界島、徳之島の8蔵元と情報交換しながら各社の酒の味を確かめた。

 

 専門家から「黒糖の香りやこうじの風味が感じられる」「味と香りのバランスが素晴らしい」などの評価があったほか、「かしだるでの熟成は個性を消してしまうことがあるので注意してほしい」などの意見も出た。