世界自然遺産登録向け4・3億円 県21年度予算案

2021年02月13日

社会・経済 

 県は12日、2021年度当初予算案を発表した。奄美関係では、新型コロナウイルスの影響で昨年延期された世界自然遺産登録に向けた取り組みに4億3517万円を計上した。延期によって生じた繰り越し(4532万円)と3月補正(1億5398万円、奄美パーク改修事業)の各予算を含めた総額は6億3448万円。仕切り直しとなる今年夏の登録に向けた取り組みとその後の保全・管理に向けて必要な事業を推進する。予算案は22日開会の県議会3月定例会に提案する。

 

 自然遺産登録関係は、大きく分けて①自然環境の保全と利用の両立②登録に向けた機運醸成への取り組み―の2項目。

 

 保全と利用の両立では▽「奄美自然観察の森」再整備の支援▽ICT(情報通信技術)を活用した希少種の密猟・盗掘対策の実施▽奄美群島交流需要喚起対策▽二つの世界自然遺産(屋久島・奄美)周遊促進▽「奄美・沖縄」周遊ルートの造成―などに加え、3月補正に奄美パーク改修事業を盛り込んだ。

 

 奄美自然観察の森(龍郷町)は、5カ年事業で進めてきたリニューアル工事を21年度中に完了する予定。希少種の密猟・盗掘対策では、21年度も引き続き希少野生動植物の画像データを収集し、画像を認識する人工知能(AI)などを活用して不法な持ち出しなどへの迅速な対応を目指す。新規で生態系を保全するための外来生物(ノヤギ)生息調査費も組み込んだ。

 

 登録に向けた機運醸成関係では、昨年延期となった遺産登録の可否が決まる世界遺産委員会(中国・福建省で開催予定)のパブリックビューイングと、世界自然遺産登録記念式典(奄美大島、徳之島)を繰り越し予算で実施。世界自然遺産登録シンポジウム(鹿児島市、奄美大島、徳之島)の開催費も組み込んだ。

 

 奄美群島振興交付金を活用した事業も継続する。群島の住民や出身学生らを対象にコスト負担を減らす航路・航空運賃軽減事業に総額10億9727万円。本土と比べ割高な輸送費の一部を助成する農林水産物等輸送コスト支援事業に6億9457万円をそれぞれ盛り込んだ。地域の裁量に基づく産業振興の取り組みを支援する成長戦略交付金推進交付金には8億1792万円を計上した。

 

 離島・へき地におけるICT(情報通信技術)を活用した離島遠隔医療推進事業は新規。現場での支援ニーズ(遠隔健康医療相談、オンライン服薬指導など)の把握や、関係機関とのネットワークの構築など実用化に向けた調査研究を始める。

 道路整備では国道58号おがみ山バイパス(BP)事業(奄美市)の再開に向け、昨年度に続き家屋の移転補償費の算定作業と用地買収を進める。

 

 空港整備では奄美空港と徳之島空港の滑走路端安全区域の拡張工事を継続。喜界空港では滑走路の舗装工事に加えて電源施設の工事に着手する。港湾整備では亀徳、湾、和泊の各港の沖防波堤整備を引き続き進める。

 

 新型コロナの水際対策として離島の港湾・空港で実施しているサーモグラフィーによる検温も継続する。