地域おこしへ「神の鳥」 エミュー飼育の豊原さん 喜界島

2021年01月02日

社会・経済 

豊原さんから与えられた葉っぱをおいしそうに頬張るエミュー

豊原さんから与えられた葉っぱをおいしそうに頬張るエミュー

 喜界島でオーストラリア原産の飛べない鳥「エミュー」が飼育されている。8000万年前からオーストラリアの半乾燥地帯などに生息し、先住民アボリジナルピープルが「神の鳥」と呼んで重宝してきた珍しい鳥だ。この鳥の可能性に着目し、地域おこしに役立てようと飼育に挑戦している喜界町大朝戸の豊原芳宏さん(64)を訪ねた。

 

 ◆育てるきっかけ

 

 エミューが飼育されているのは、豊原さんが経営する豊原畜産の敷地内。島のほぼ中央部に位置するこの畜産農場の一角で、雄、雌4羽ずつ計8羽のエミューが育てられている。

 

 豊原さんがエミューを育て始めたのは、東京農業大学名誉教授で元副学長の兄・秀和さんから話を持ち掛けられたことがきっかけ。元来、生き物を育てることが好きな豊原さんは、二つ返事で引き受けた。

 

 2020年5月に体長40センチ(生後40日)ほどで島に送られてきたエミューは、7カ月後の11月には、成鳥と変わらない体長160センチほどにまで成長。「最初は小屋もなく、牛舎の中で育てた。小さいときはウリ坊(イノシシの子ども)のようなしま模様があったが、成長するにつれて消えていった」(豊原さん)という。

 

おとなしく人懐っこい性格のエミュー

おとなしく人懐っこい性格のエミュー

 ◆人懐っこい性格

 

 とてもおとなしく人懐っこい性格のエミュー。雑食で、落ち葉や草、果実、小さな昆虫など何でも食べるが、豊原さんは「牛用と鳥用の飼料をミックスしたものを朝と夕方に与えている。1日の量は全体で3キロほど。初めてなので手探りの状況だが、順調に育っている」と目を細める。豊原さんが葉っぱを手に近寄ると、あっという間に駆け寄ってきておいしそうに頬張った。

 

 豊原さんは「牛と同じペースで育てているので手間は掛からない。家族連れなどが毎日のように見学に来ている。時計など珍しいものを見るとつつく。この子たちは何でも興味津々だよ」と話した。

 

 ◆豊富な利用価値

 

 エミューには豊富な利用価値がある。ひなや卵、肉も販売できるほか、しっぽ付近から採れる油「エミューオイル」も高価だ。

 

 豊原さんは「肉はダチョウよりは味が濃いんじゃないかな。羽毛も売れるし、皮もハンドバッグなどに使える。油は肩こりにも効能があり、美容にも使える。卵の殻はアート作品の材料ともなる。免疫力が高く新型コロナウイルスのワクチン製造実験にも使われている」と説明。

 

 さらに「親鳥になるのは1年半ほど必要。1羽で年間25個の卵を産むので、2~3年で100羽にまで増やしたいと思っている」と展望を語った。

 

緑色のエミューの卵を手にする豊原さん

緑色のエミューの卵を手にする豊原さん

 ◆地域おこしに一役

 

 豊原畜産では、牛150頭、ヤギ70頭を飼育。マンゴーも10アール栽培している。静岡県出身の妻・周子さん(42)に加え、従業員の手を借りて経営している。

 

 豊原さんは「牛は餌となる牧草を作らなければならず、それを収穫する機械も必要だ。エミューは牧草がいらないから高齢者でも育てられる。私が成功すれば、他にも育てたいという人が出てきてくれると願っている」とし、「今後いろんな人と連携してさまざまな商品を考えていきたい。きっかけを与えてくれた兄貴は、島のことをいつも気に掛けてくれ感謝している。島がまた生き生きとしてくるよう地域おこしに一役買いたい」と目を輝かせた。