飲食店が宅配に活路 奄美大島

2020年04月12日

社会・経済 

 料理の宅配サービスを始めた奄美市名瀬の飲食店=10日、奄美市名瀬

料理の宅配サービスを始めた奄美市名瀬の飲食店=10日、奄美市名瀬

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、奄美大島の飲食店では、店内飲食を控え、プロの味を自宅や勤務先で楽しめる持ち帰りメニューや宅配サービスに力を入れ始めた。密閉、密集、密接(3密)を避けようと客の来店が減少する中、経営維持のために新たな活路を見いだそうと、飲食業者たちがあの手この手で奮闘している。

 

 「お客様各位 新型コロナウイルス感染予防対策のため、当店では座席に間隔を置いています。テイクアウトでのご提供をお勧めしております」

 

 奄美市名瀬の繁華街「屋仁川」にあるステーキ店「パスタン」。店の入り口に上記の張り紙がしてある。「以前からテイクアウトの提供はしていたが、4月以降、特に力を入れ始めた」と同店の大崎貴仁さん。新型コロナウイルスの全国的な感染拡大に伴い、来店客は徐々に減少。3密を避けるため、あえて満席にはしない工夫を凝らすものの、最近では来店客も少なく、皮肉にも「今はちょうどいい」と困り顔。

 

 状況を少しでも打破しようと、10日から市内での宅配も始めた。「店で客を待っているだけでは乗り切れない。自分たちから外に出てお客さまのニーズをつかまえないと」と必死だ。宅配先でも極力客との接触を避けるため、会計トレイを介して現金授受をする「置き配」システムを導入。「奄美ではまだ持ち帰りや宅配サービスが普及していなかった。逆風を力に変えて、新たなニーズを開拓したい。今を乗り越えれば強い店になる」と力を込める。

 

 同様の取り組みは奄美大島南部の繁華街・瀬戸内町古仁屋でも。「丸屋レストラン」(屋崎一英店主)は、ゆったりくつろげる座敷席が評判だが、15日までは店内での料理提供をやめ、持ち帰り専門に切り替えた。初の試みとして、古仁屋市街地と清水、阿木名エリアを対象にした出前にも乗りだした。

 

 店主の屋崎さんは「(店内提供をやめたのは)苦渋の決断だが、従業員とその家族、仕入れ先やお客さまの安全を第一に考えた」と苦しい表情で語った。

 

 そんな奮闘を重ねる飲食店に援軍も現れた。地域情報サイトを営む(株)しーま(深田小次郎社長)は8日、持ち帰りサービスを始めた飲食店を紹介する専用サイト「奄美テイクアウト応援サイト」を開設した。

 

 外食自粛ムードが漂う中、外食したくてもできない子育て世帯が、料理を持って帰ることができる店を手軽に検索できる。11日現在、奄美大島の14店舗を掲載しているが、サイト開設後、喜界島の飲食店からも掲載の問い合わせが来ているという。

 

 深田社長は「奄美群島でも持ち帰りの需要が高まりつつある。サイトを通じて、頑張って営業を続けている飲食店の取り組みを知ってもらい、支援につなげたい」と話し、掲載を希望する飲食店を募っている。掲載は無料。

 

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 奄美大島5市町村の首長と商工関係団体などは10日、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、国の緊急事態宣言対象地域からの来島を控えてもらうメッセージを発表した。島内の飲食店でも、島外からの客に対して店内利用を自粛するよう理解を求め、持ち帰りメニューを推奨している店もある。