元大島教諭寺田さん「鹿児島植物記」発刊

2019年05月02日

自然・気象

奄美の身近な自然や文化も紹介している「鹿児島植物記」

奄美の身近な自然や文化も紹介している「鹿児島植物記」

  身近な自然や植物と人々の暮らし、文化との関わりを紹介する「鹿児島植物記」(南方新社)がこのほど発刊された。著者は元県立博物館主任学芸主事で、理科教諭として1983年から大島高校で勤務した寺田仁志さん(66)=鹿児島市。奄美群島の植生にも造詣が深く、地域の衣・食・住と自然との関わりを分かりやすく解説している。

 

「鹿児島植物記」は▽人里のうつろい▽山のみどり▽水辺のみどり―の3章構成。撮りためた里山や自然の風景、植物の写真をふんだんに使用している。人々の生活様式の変化とともに姿を変えながら地域に息づいてきた自然環境の変遷もまとめた。

 

 奄美の自然については、高倉の屋根にカヤやリュウキュウチクが使われていたり、衣料の原料にバショウが用いられていたことなどを解説。幕末の薩摩藩士、名越佐源太が著した「南島雑話」の写真など、地域の習俗に関する資料も掲載した。ガジュマルの木に出没するといわれた妖怪ケンムンの伝承なども紹介し、自然の恩恵を受けながら自然への畏敬の念を大切にしてきた人々の歩みも記している。

 

 寺田さんは「鹿児島県の自然は過去からの私たちの活動の遺産であり、次世代へ引き継ぐべき。奄美が世界自然遺産登録を目指す今だからこそ、私たちの暮らしを支えてきた身近な自然にも目を向け、大切さを考えてほしい」と話した。

 

 A5判、206㌻。2800円(税別)。問い合わせは電話099(248)5455南方新社。

  著者の寺田仁志さん

著者の寺田仁志さん