湯湾岳利用ルールで関係者ら意見交換

2020年02月22日

自然・気象

登山道を歩いて自然観察を楽しむ住民ら=2018年1月、湯湾岳

登山道を歩いて自然観察を楽しむ住民ら=2018年1月、湯湾岳

 環境省は21日、今年夏を見込む奄美・沖縄の世界自然遺産登録に向けて、推薦地の湯湾岳(694メートル、大和村・宇検村)の利用に関する関係者との意見交換会を初めて開いた。来訪者の増加を視野に、登山道周辺のエリア別に保全と利用の方向性を示し、山頂付近への立ち入り規制などを盛り込んだ利用ルール案を提示した。関係者との合意形成を図り、夏ごろまでにルールの試行を開始する方針。

 

 湯湾岳は奄美最高峰。亜熱帯照葉樹の森に固有種や希少種も含め多様な動植物が生息・生育している。山頂一帯は奄美群島国立公園の特別保護地区に指定され、奄美・沖縄の世界自然遺産推薦区域の中でも核となるエリア。奄美大島を開祖した二神が降り立ったといわれる霊峰で、参拝に訪れる人も多い。

 

 意見交換会には専門家や自然保護団体、観光関係者、地元住民、行政担当者ら30人が参加。同省から、エリア別に利用の方向性を盛り込んだゾーニング計画とルール案、展望台など施設整備の方針が示された。

 

 ゾーニング計画では、山頂から祠(ほこら)や石碑のある広場まで約250メートルの区間を「保全ゾーン」、宇検村側の登山道約1・6キロを「準保全ゾーン」とし、宇検村側の登山口のある湯湾岳公園周辺と、木道が整備された大和村側の登山道約370メートルは制限を設けない「自然体験ゾーン」と設定した。

 

 利用ルール案では、保全ゾーンは厳正な保護を図るため一般の立ち入りを規制。準保全ゾーンは環境負荷を軽減し、自然体験の質の向上を図るため、利用は1グループ10人程度以下の少人数とし、ガイドの同行を推奨。

 

 エリアに関わらず、▽動植物の捕獲、採取▽外来種の持ち込み▽樹木の伐採▽歩道や広場以外への立ち入り│などを禁止する項目を盛り込んだ。

 

 ルールは同省と大和、宇検両村を中心に策定する。当面は地域の合意に基づく自主ルールとし、法的拘束力はない。将来的に両村で条例などの整備を検討するとしている。

 

 展望台は、老朽化によって撤去された広場の旧展望台跡近くに整備する。2020年度に実施設計を行い、21年度の着工、完成を目指す。

 

 奄美群島国立公園管理事務所の千葉康人世界自然遺産調整専門官は「自然遺産登録に向けて、オーバーツーリズム対策が急務。関係者の意見を丁寧に聞きながら合意を図りたい」と述べた。