奄美・琉球諸島の世界自然遺産登録を目指す環境省の那覇自然環境事務所は、奄美大島の森林地域について登録の課題を考慮した適正利用の方向性を示した。豊かな自然を守りながら持続的に観光に活用する方策を地域単位で掲げ、少人数のガイドツアーに対応した古道活用のルート設定や自動車乗り入れ、夜間観察時間の制限など「利用コントロール」を提案している。
照葉樹林が生い茂り、貴重な生物のいる森などを軸に地域を北部、中部、南部に分けた。
提案では、各地域で古道や滝といった資源も活用して利用の多様化と環境負荷の軽減も図る。夜の観察に利用されるルートは先行車両がいると観察できない可能性も高く、時間や速度の制限などのルールを設ける。混雑が予想される期間や自然保護上の問題があればマイカーを規制し、シャトルバス運行と一方通行規制を組み合わせ混雑を回避する。
自然保護の重要性が高い中部地域は、既存の利用エリア以外も将来的に集中的な利用が想定されることから4エリアに細分化。中心エリアは自然保護を最優先し、少なくとも車の乗り入れを制限し徒歩の利用についてもルールを定め自然への悪影響を防ぐ。周辺部に利用拠点機能を設けて利用圧の抑制・分散を図りながら良質な利用体験の場を提供する。
中部地域のうち金作原、湯湾岳・福元両エリアは、少人数のガイドツアーに対応して古道を活用したルートを設定。金作原エリアは近くにトイレや小規模の駐車スペースも設け、狭い山道で良質な散策空間を確保するため道路の通行を規制する。
湯湾岳・福元エリアは既存施設の自然体験拠点機能を強化。展望施設も設けて魅力アップを図る。植生への悪影響が懸念される登山道には木道を設ける。
住用エリアは奄美の森や自然を学べる場として、ある程度の大人数利用を想定した拠点施設を整え、周辺に散在する古道や滝、川などの資源を活用したプログラムを展開する。
奄美自然観察の森が利用の拠点となっている北部地域は、奄美の森の入り口として自然や利用上の注意事項など情報提供の場としての機能を強化。南部地域は既存施設や国道・県道沿線を活用し、沿線は奄美の森林景観を堪能できるように配慮する。
地域単位の方向性は13日、奄美群島の世界自然遺産登録の前提となる国立公園の指定と管理に関する検討会で初めて提案した。同事務所は今後、徳之島などの利用の方向性も示すという
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「インバンの祝い」粛々と
―ノロの正月行事 |

24日は旧暦の正月2日。奄美市名瀬大熊では、かつてはノロの正月行事が盛大に行われ、地域住民らも集って一年の安全を祈願し新年を祝った。親ノロの後継者不在のまま神人の高齢化も進み、トネヤを管理する田中稜郎さん(79)、キヨ子さん(79)夫妻がノロの辞令書を公開する「インバンの祝い」を粛々と続けている。
琉球王府の支配下、奄美の各シマのノロ職は王府の補任辞令を受け、辞令書には王府の印判が押された。大熊には萬暦15年(1587年)10月4日付をはじめ3枚の辞令書が残っている。
田中さんの姉で親ノロだった重田キサ子さんが病に倒れた1995年以降、「アラホバナ」「フーウンメ」「フユウンメ」をはじめ、代々引き継がれたノロ祭りの継承は困難になった。焼失や盗難の恐れから、辞令書は扇子や衣装など貴重なノロの装飾品とともに奄美博物館に寄託されたが、年に1度インバンの祝いの日に親ノロの住居だったシャントネで披露されている。
24日午前11時ごろ、田中さん夫妻とウッカン(親ノロの補佐役)を務めた高司カツさん(82)がシャントネで辞令書や装飾品を広げ、神棚に焼酎と吸い物などを供えて手を合わせ、杯を交わして1年の無事を祈った。
高司さんは「親様がいるときはにぎやかにしていた。みんな年を取って次々と亡くなった」と嘆く。
田中さんは「大熊は漁業が盛んで、航海の安全や大漁祈願にたくさんの人が訪れ、盛大に祝った」と懐かしむ。田中さんの後継者も決まっておらず、「誰かがしてくれれば難儀しないけれど」とため息をついた。
奄美でも最低気温が10度前後まで下がり、ようやく冬らしくなった。今月23日には、各地で旧正月の行事があり、伝統芸能や郷土料理作りなどの様子が本紙で紹介された▼この時期になると、母親が作ってくれた「豚飯」が懐かしくなる。奄美大島の郷土料理では「鶏飯」がポピュラーだが、わが家では屋仁(奄美市笠利町)出身の母親が作る「豚飯」が一番人気だった。塩漬けにした豚肉を使うのが特徴で、鶏飯と同様に薄焼き卵やミカンの皮などの具を載せスープをかけて食す▼母親の時代には貴重な豚肉を塩漬けにして長期保存し、大切に使っていた。スーパーやコンビニなどの出現で島の暮らしも大きく変わり、最近は郷土料理も薄味になったように感じる。時々、昔の味が恋しくなる。(と) |
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