パリで大島紬の魅力発信 奄美市の芝田さんと娘の原口さん 世界的ブランドとコラボ

2025年04月01日

社会・経済 

パリで開催されたファッションショーで披露された本場奄美大島紬を使用した衣装=3月9日、フランス(提供写真)

奄美大島の伝統工芸品、本場奄美大島紬を使用した衣装が3月9日、フランス・パリの「シャングリ・ラ ホテル パリ」で行われたファッションショーで披露された。衣装を制作した服飾ブランドへ大島紬を提供した奄美市名瀬の芝田育代さんは現地でショーを観覧し、「紬の軽さで衣装の裾が波のように揺れて圧巻だった」と絶賛した。

 

きっかけは芝田さんの娘・原口麻希さん(33)が「大島紬を世界に発信する」をテーマとしたブランド化に取り組む中で、東京と埼玉を拠点に世界で活動するブランド「再倖築(さいこうちく)」を知り、2023年11月にSNS(インターネット交流サイト)を通じて大島紬に対する熱い思いを込めたメッセージを送ったこと。

 

再倖築のデザイナーから返信があり、やりとりをする中で今年3月のパリ・ファッションウイーク期間中(3日~11日)のショー(ファッションウイークスタジオ主催)で大島紬を使用した衣装を披露することが決まった。

 

原口さんは結婚を機に奄美市名瀬から東京へ移り、現在は長野県飯綱町に在住。大島紬の売り上げ低迷や後継者不足などの課題解決に関心があり、23年9月に出産のため帰省した際に企画を練り、24年1月に芝田さんと共に大島紬ラグジュアリーブランド「La‐chiffon(ラ・シフォン)」を立ち上げた。デザインは再倖築が担当し、伝統工芸を現代ファッションに落とし込む試みを始めた。

 

再倖築のショーのテーマは「パンク」。30着の衣装のうち、1着に大島紬を用いた。芝田さんは今回、衣装のために大島紬約5反分を提供。「鬼」をテーマとしたトップスのフリンジや、パンツの裾のフリル、鬼の角をイメージした部分などにふんだんに大島紬が使用されており、観客の目を引いた。

 

芝田さんと原口さんは3月6日から11日までパリに滞在。期間中、芝田さんは秋名バラ柄の二部式、原口さんは麻の葉柄のコートやワンピースなどを身に付け、日本が誇る伝統工芸品を世界にアピールした。また、本場奄美大島紬産地再生協議会の協力を得て、観客100人に大島紬を使用した財布と大島紬の工程を記したパンフレットなどを配ったという。

 

芝田さんは「ショーでの衣装披露は、大島紬の価値をさらに高めていくための第一歩。今後は紬の工程や作業の緻密さを理解してもらいながら、商品を届けていきたい」、原口さんは「大島紬の新しい価値観や世界観をファッションで表現しており、可能性を感じた。紬は布自体が芸術品。これから世界中の人が知る機会をつくっていきたい」と展望を語った。

 

再倖築の代表でデザイナーの田尻永太さん(23)は「大島紬の柄や光の反射を意識して制作したこん身の一着。見た目の重量感に反して軽く、時間と手間のかかる工程にリスペクトも込めて、手作業で仕上げた。これからも大島紬を取り入れた服を作り、世界へ発信したい」と話した。

 

大島紬も含むショーで披露した衣装は、4月29日から5月6日まで、東京都のデパート「日本橋高島屋」で展示される。