奄美のティル作り50年 「必要な人へこれからも」 奄美市名瀬の瀧さん
2025年04月10日
地域

竹の編み方を説明する瀧照志さん=5日、奄美市名瀬
奄美で農作業などに使われるティル(竹製の背負い籠)を50年以上、手作業で作り続ける男性が奄美市名瀬大熊町にいる。瀧照志さん(87)の作るティルには同市笠利町や喜界からも注文が寄せられる。瀧さんは「使う人も作る人もずいぶん減ったが、必要な人がいる限りは作ってあげないと」と話しており、ティル作りの継続に意欲的だ。
瀧さんは大熊出身。父親がティル作りの名手だったため自然と作り方を覚えたという。自ら作り始めたのは水道関連の会社を経営していた30代の頃。近所にある教会のバザーへの出品を頼まれたのがきっかけで、以降約50年間作り続けている。

瀧さんが作ったティル
ティル作りの材料は方言で「ティンチョウ」と呼ばれている直径約4~5センチの竹。近所を流れる大熊川を約500メートルさかのぼった川沿いに自生しており、瀧さんは現在も徒歩で山を登って竹を切り出している。
「籠を編むためにはできるだけ節と節の間隔が長くて真っすぐな竹がいい。長さも4メートルは必要。材質も形状もマダケが最適だけど、最近はまったく見掛けない」と話す瀧さん。「昔は父と山を越えて良い竹を探したもの。5~6本は担いで山を下りた」と当時を懐かしむ。
持ち帰った竹はできるだけ早く割いて形を整え、乾燥させないために水に漬けておく。「1日4~5時間の作業で編み上げるのに3日。材料の準備を含めるとティル1個を完成させるまで6日間くらいかかる」と説明する。長年ティル作りを続け、熟練の域に達している瀧さんだが、「父は1日で3個は編んでいた。とてもかなわない」とも。
「たまに若い女性が作り方を聞いてくるので、編み方は教えるが、材料の調達や道具作りまでは少し難しいかな」と気遣う瀧さん。「それでもやってみたいという熱意のある人がいたら喜んで教えてあげたい。後継者はありがたいからね」と笑顔で話した。