ウミガメ回遊を衛星追跡 米国専門誌に論文掲載へ 奄美海洋生物研の興会長ら

2018年12月07日

 追跡調査のため発信機を付けたウミガメの放流(奄美海洋生物研究会提供)

追跡調査のため発信機を付けたウミガメの放流(奄美海洋生物研究会提供)

 奄美海洋生物研究会の興克樹会長らは、奄美大島で産卵したアカウミガメとアオウミガメの行動ルートの調査結果を論文にまとめた。奄美大島や沖縄沿岸で産卵したアオウミガメの追跡調査は初めてで、本州沿岸に餌場が多いことを実証。アカウミガメの追跡調査では、餌場が東シナ海に集中することを裏付けた。論文は2019年5月発行の米国の学術誌に掲載される予定だ。

 

 興会長(47)と、龍郷町安木屋場海岸でウミガメの上陸頭数調査などを行っている荒田利光さん(69)が6日、記者会見で発表した。

 

 同研究会は15年6月から7月にかけ、安木屋場海岸で産卵したアカウミガメとアオウミガメそれぞれ5匹の甲羅に人工衛星発信機を装着して放流し、回遊ルートを探った。

 

 調査期間が最も長い個体はアカウミガメが約11カ月間、アオウミガメは約2カ月間。アオウミガメ5匹のうち2匹は放流後の短い間で追跡できなくなったものの、他の3匹は本州や九州沿岸まで北上し、このうち1匹は東京の三宅島に達したことが分かったという。

 

 アカウミガメは4匹が東シナ海にとどまった。残り1匹も日本海へ北上して本州の中国地方沿岸に達した後、海水温の低下に伴って東シナ海に戻った。

 

 論文はこれらの結果について、興会長や荒田さんなど国内外の研究者6人が取りまとめて成果を考察した。米国の「Chelonian Conservation and Biology」に掲載される予定で、インターネット上でも近く公表される。

 

 興会長は「謎に包まれていたアオウミガメの生態や行動範囲の解明につながるのではないか」と期待。近年、奄美大島でアカウミガメの上陸確認数が減少傾向にあることについては、回遊ルートの東シナ海での漁業による混獲の可能性にも触れ、「海浜部の保護にとどまらず、広範囲での保護施策が必要」と話した。上陸頭数調査や保護に取り組んできた荒田さんは「記録が残ることで、調査研究が一層、進むのではないか」と語った。

アオウミガメの回遊ルート(奄美海洋生物研究会提供)

アオウミガメの回遊ルート(奄美海洋生物研究会提供)