クロウサギの保全・研究で協力 平川動物公園の知見生かす 新施設4月開所へ連携 大和村と鹿児島市

2025年02月19日

クロウサギの保全・研究で協力 平川動物公園の知見生かす 新施設4月開所へ連携 大和村と鹿児島市

国の特別天然記念物アマミノクロウサギの研究飼育施設を4月に開所する大和村は18日、希少野生動物の保全や研究に関する連携協定を鹿児島市と結んだ。新たな施設では、クロウサギを長年飼育し繁殖に成功するなど実績のある同市施設・平川動物公園のノウハウを生かし、けがをした個体の保護や野生復帰への取り組みをはじめ、生態研究や環境教育などを行う。研究成果は課題となっているロードキル(交通事故死)や農業被害への対策にも役立てる。同日は、平川動物公園で飼育されていた雄の

大和村に移送されたアマミノクロウサギの雄「ユワン」(平川動物公園提供)

クロウサギ「ユワン」が飼育展示のため大和村へ移送された。

 

連携・協力事項は、保全のための調査・研究、教育普及啓発、職員の相互研修など6項目。具体的には、村の施設と平川動物公園が奄美群島に生息する野生動物の飼育管理や治療技術の情報交換、相互研修を実施することで、高度な救護体制を構築する。また、アマミノクロウサギを飼育展示するのが世界で両施設のみであることから、保全活動の普及啓発に向けた独自のイベントやシンポジウムなどを共同で開催する。

 

協定締結式は鹿児島市役所であり、大和村の伊集院幼村長は「奄美大島と徳之島が世界自然遺産に登録され、それぞれの自治体が心を一つにした。一歩踏み込んだ形で保全活動に取り組まなければならない中で、平川動物公園の指導をいただきながら、奄美の生き物の生態系が守られるような施設にしていきたい」と述べた。

 

同市の下鶴隆央市長も「大和村の取り組みに協力できることをうれしく思う。鹿児島県民でも奄美に行ったことがないという人が多い。島の生態系、文化などに興味を持ってもらうきっかけにもなればいい」と期待した。

 

同村の施設は思勝の環境省奄美野生生物保護センターに隣接し、名称は「アマミノクロウサギミュージアムQuruGuru(くるぐる)」。交通事故などで傷ついたクロウサギの治療とリハビリを行い、最大20匹の展示・飼育が可能。設置したカメラで巣穴の中の様子も観察できる。奄美の自然や環境をテーマに活動する学生や研究者を支援するための機能も備える。

 

村企画観光課によると、4月20日のオープンを予定しており、「ユワン」を含めたクロウサギの雄2匹を平川動物公園から受け入れる。