奄美大島いきものがたり

2024年06月20日

○緻密な巣作り セッカ

 全長13㌢ほどの小さな鳥、セッカ。色合いやサイズが似ているスズメと勘違いされることが多い。
知人が牧草地に作られたセッカの営巣地を案内してくれたことがある。巣の場所を説明されても、どこにあるのかわからない。「草本に不自然な隙間があるように見える」と教えてくれたが、ピンとこなかった。ようやく発見した巣は、高さ30㌢ほどの中間層のところに作られていた。生えている草本で巣を作っているため、カモフラージュ性の高い巣だった。
巣は「裁縫したのか」と思いたくなるほど、きれいに縫い合わせられている。雨風から卵やヒナを守ったり、巣自体が壊れたりするのを防ぐためなのか、周りの草本と複雑につなぎ合わされていた。縫合部はクモの糸が用いられているので、小さな鳥であれば十分な強度だろう。
エサをくわえた親鳥は、ヒナの待つ巣へと一直線に向かうことはしない。少し離れた草先に止まり、周囲を見渡したのち、草藪(くさやぶ)に潜り込んで巣まで移動するようだ。用意周到である。
使用後の巣を見せてもらったのだが、とても鳥が作ったものとは思えないほど緻密な作りで改めて驚いた。

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○在来は白い花 シマサルスベリ

 子どもの頃、「木登りが上手なサルですら登れないサルスベリという木がある」と教えられた。木の肌はすべすべしていて、妙に名前の由来に納得したことを覚えている。花はピンクだった。
社会人になり、植物にも関心を持つようになったときに発見したサルスベリは、白い花を咲かせていた。図鑑で確認してみると、シマサルスベリと書かれていた。身近な植物と認識していたが、環境省レッドリスト2020では、準絶滅危惧(NT)に選定されている。
民家や集落に植えられている主にピンク色の花を咲かせるのは中国原産のサルスベリ、そして森林に生えている白色の花を咲かせるのは在来のシマサルスベリ。子どもの頃に教わった知識が、植物に興味を持ち始めた社会人になって、少しグレードアップされた感じがして、うれしかったことを覚えている。

 (平城達哉・奄美博物館学芸員)