奄美大島いきものがたり
2024年11月08日
○毎年、少数がやってくる ズグロカモメ
上空ではサシバが旋回していて、奄美はすっかり秋模様だ。これからの季節は、奄美大島へやってくる渡り鳥の種類が増えてくる。個人的にも楽しみな時期だ。先日の本紙で、迷鳥のオオグンカンドリが保護、放鳥されたという記事を読んで驚いた。予期せぬ渡り鳥が記録されることもある。
奄美大島でカモメは珍しい。日本本土のように海沿いへ行けば、見られるということはない。毎年観察されるカモメの仲間といえば、アジサシ類くらいだ。2020年、奄美市内の海岸でズグロカモメを発見した。海上を素早く飛翔したり、砂浜をゆっくりと歩行したりしていた。私の10㍍の距離まで近寄ってくることもあった。ズグロカモメは秋もしくは春頃に毎年、少数が記録される迷鳥である。春には夏羽になっている個体も多く、頭は真っ黒でまさに「ズグロ」カモメである。
渡り鳥は神出鬼没。カレンダーを把握しているのかと思うくらい毎年同じ時期に渡ってくる種がいれば、予期せぬ種が予期せぬタイミングで確認されることもある。これから春までにどのような鳥と出会えるのだろうか。
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○〝幻の花〟見つけた カンラン
奄美大島には希少な固有種が多く生息・生育している。読者の皆さまも周知のことと思うが、法律や条例によって、採取等が禁じられている種も多い。以前は採取しても問題がなかった種であっても「今はダメ!」というものもあるので、注意が必要だ。
秋が終わる頃、森林内の林床では、希少種のカンランが開花する。園芸植物として人気があり、実際に育てたことのある人もいるのではないだろうか。森林内を歩いていると、カンランの葉を見かけることがあるが、花は全く見つけられない。私自身、野生株の花は〝幻の存在〟だと思っていた。
しかし、数年前、以前花を咲かせたという場所を訪れてみると、ちょうど開花していた。野生下で花を見たのは、たった1株だけである。唯一心残りなのがカンランの香りを嗅(か)いでいないこと。とてもよい香りがするそうなのだが、花の観察・撮影に集中していて、嗅覚を働かせるのをすっかり忘れていた。
(奄美博物館)