奄美大島いきものがたり

2024年12月19日

●冬でも油断できない ヒメハブ

ヒメハブ

先日、森林内の沢を歩いているとき、足元にいるヒメハブを発見した。落ち葉の隙間から顔だけを出していて、危うく踏んでしまうところだった。同行者は島外の人だったのだが、私が木の枝でその場所を指すまで気づかなかった。「これは見慣れていないと気付かないよ~」と嘆いていた。私自身、落ち葉に紛れ込んでトグロを巻いているヒメハブには、何度も驚かされたことがある。

ヒメハブはクサリヘビ科に属する毒ヘビだ。「ヒメ」は小さいという意味である。ハブよりも毒性は低いといわれているが、実際に咬まれた知人によると、痛みはかなり強烈で腫れや吐き気に見舞われたとのことだった。

ヒメハブが捕食するアマミアカガエルの繁殖は冬にピークを迎える。気温が一桁になっても繁殖地の周辺にはヒメハブが待機している。ハブに比べると気温が低くても見かけることが多く、周囲の環境にも同化しているため、冬のフィールドに出るときも油断できない。

 

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●クロウサギが好む ホソバワダン

ホソバワダンの花

海沿いに黄色い花が咲いている。これはキク科のホソバワダンである。こんな岩場でどうやって養分を吸収しているのだろうかと思うこともあるが、ホソバワダンは敵の少ない厳しい環境を選択したのだろう。島では「ニガナ」と呼ばれ、汁物やかき揚げなどの料理に使われる。

先日、大和小中学校(当時)におけるアマミノクロウサギの飼育に関する論文を発表した。学校に残されている数ある資料を見させてもらったのだが、その中に児童生徒の飼育日誌も含まれていた。そこには「アマミノクロウサギはホソバワダンを他のどの植物よりも先に食べる」「ホソバワダンとリンゴを一緒に与えると、リンゴの方がよく食べた」などの記録が残されている。これらの記録から、当時の児童生徒はアマミノクロウサギの好物であると考えていたようだ。一度、アマミノクロウサギがホソバワダンを食しているシーンを観察してみたいものだ。

 

(平城達哉・奄美博物館学芸員)