密猟・持ち出しの課題共有 官民登壇、議論交わす 奄美市で対策セミナー
2024年06月26日
世界自然保護基金(WWF)ジャパン(東京都)主催のセミナー「奄美大島における野生生物の密猟・持ち出し対策」が25日、奄美市名瀬のアマホームPLAZAであった。官民の担当者らが登壇し、生息フィールド、輸送、市場の各分野での取り組みを共有。登壇者からは、規制対象外の種の大量持ち出しや法の網をかいくぐるような捕獲などの事例紹介も相次ぎ、さらなる対策に向けて活発な議論が交わされた。
希少種が島外へ持ち出される事例が相次いでいることが背景。近年は規制対象外の種でも営利目的で大量に持ち出され、予防的な観点から問題となっている。会場とオンラインのハイブリッド形式で行われ、行政、航空会社、EC(電子商取引)関連企業、エコツアーガイドら約120人が参加した。
環境省の担当者は捕獲や採取に対する関係法令や自治体、警察との連携を説明。過去5年間(2019~23年度)に確認した島外への持ち出し件数が、違法性がないものも含め142件あったことなどを紹介した。
日本航空の担当者は、環境省と連携しタブレット端末を用いた希少種判別の取り組みを紹介。専門家でないスタッフが短時間で判別する難しさなどを課題として上げ、専門家の空港常駐や動植物の一切の持ち出しを禁止か許可制とする法や条例の制定を訴えた。23年7月には規制対象外種のクワガタや準絶滅危惧種のアマミシリケンイモリ数百匹の持ち出しが2件あった。
個人間の取引プラットフォ―ムYahoo!オークションを運営するLINEヤフーの担当者は、自社で動植物の取り扱いを定めるルールに基づき専門チームが24時間365日オンライン取引を監視していることを紹介。法改正や世論の動向に応じルールを見直しており、最新の事例として今年7月に野生捕獲した両生類の出品を禁止することを紹介した。
奄美大島のエコツアーガイド2人は、実際に盗掘された様子などを写真で紹介。近年、法の網をかいくぐる事例が目立つとして、大きな問題となる前に、法や条例でさらなる規制をするなど対策強化を訴えた。
セミナー後は非公開で「島外への動植物持ち出し全般を禁止する条例制定への是非」をテーマにした意見交換会もあった。国内では、沖縄県の久米島町で町全域での生きた野生動植物の捕獲を禁止する条例が、鹿児島県の十島村で村有地での昆虫の捕獲・採取を禁止する条例がある。