最初期のサークル形状発見/アマミホシゾラフグ
2017年08月29日
奄美大島沖の海底で「ミステリーサークル」と呼ばれる幾何学模様の円を砂地に作るアマミホシゾラフグについて、サークルの最初期の形状が初めて明らかになったと、千葉県立中央博物館分館海の博物館の川瀬裕司博士(農学)らの研究グループが23日発行のスイスの科学雑誌に発表した。研究グループは「フグがいかにして精巧な模様の構造物をつくるのかという謎解きが一歩前進した」としている。アマミホシゾラフグは同島周辺に分布する体長約10㌢の小型のフグ。水深12~30㍍の砂底で、放射状に山と谷が並ぶ直径約2㍍の複雑な構造の円を作る。瀬戸内町の大島海峡で2012年に発見され、シッポウフグ属の新種として14年にアマミホシゾラフグと命名された。背中の斑点が奄美の星空のように見えることが名前の由来。15年に生物学の研究者が選ぶ「世界の新種トップ10」に選ばれた。
これまでの研究で、フグは3~9月に周期的に繁殖を繰り返し、雄が単独でサークルを作って雌を誘い、サークルの中央部で放卵、放精して繁殖することや、卵がふ化するまで雄が世話をすることなどが分かっていたが、精巧な模様の構造物がどのように作られるかなど生態には謎が多い。
川瀬博士らは16年6月、瀬戸内町嘉鉄沿岸の水深13~17㍍の地点で潜水調査を行った。フグの行動を観察し、撮影した写真とビデオを解析した結果、フグが新しいサークルを作り始める際、海底に体を押し付けて胸びれ、背びれを動かしながら数十個の小さなくぼみを作ることが分かった。
研究グループは「(サークルの)最初期は小さなくぼみの集合体で、円形幾何学模様とはほど遠い形状であることが初めて明らかになった」として、フグが円の外側から中央部に向かって放射状に谷を掘るための目印として、自分の体ほどの小さなくぼみを初めに作っていると考察している。
川瀬博士は「アマミホシゾラフグの生態にはまだまだ分からないことが多く、それらの謎を一つ一つ解き明かしていきたい」と述べた。