アマミトゲネズミ  飼育下で初の繁殖 宮崎市で4匹誕生 環境省「技術確立に期待」

2018年10月23日

飼育下で初めて誕生したアマミトゲネズミ=13日、宮崎市フェニックス自然動物園(同園提供)

飼育下で初めて誕生したアマミトゲネズミ=13日、宮崎市フェニックス自然動物園(同園提供)

  環境省は22日、国の天然記念物で絶滅の恐れのあるアマミトゲネズミについて、宮崎市フェニックス自然動物園(宮崎県)で飼育している雌雄が自然繁殖し、4匹の子ネズミが誕生したと発表した。アマミトゲネズミの飼育下での繁殖は初めて。同省は今後も飼育の取り組みを継続し、繁殖技術の確立を目指すとしている。

 

 アマミトゲネズミは奄美大島の固有種。体長約9~16センチ、尾の長さ6~13センチ。背面は黒褐色に黄褐色が混じり、腹部は灰白色。全身に2センチほどのとげ状の毛がある。森林開発や、野生化した猫(ノネコ)やマングースによる捕食被害で激減し、同省のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類に位置付けられている。

 

 同省は絶滅の恐れのある日本固有のトゲネズミ類の保全を目的に、生息域外での飼育、繁殖の試みに2017年着手。宮崎市フェニックス自然動物園と埼玉県こども動物自然公園、恩賜上野動物園の3施設でアマミトゲネズミの飼育を開始した。

 

 宮崎市フェニックス自然動物園では17年1月に雌雄各6匹、計12匹を受け入れた。18年9月初旬、繁殖ペア一組の雌に腹部のふくらみなど妊娠の兆候がみられ、同月15日に飼育員が生後1週間ほどと推定される子ネズミを確認した。出産した4匹のうち、1匹は10月20日に死亡が確認された。

 

 同動物園の竹田正人副園長は「子ネズミは元気にすくすく育っている。今後は繁殖条件を解析して今度の技術に生かし、他の動物園とも協力体制を強化したい」と話した。

 

 誕生した3匹を含め、現在3施設で飼育しているアマミトゲネズミは計28匹。環境省希少種保全推進室の番匠克二室長は「全国でも初めての知見となり、役立つ成果が得られた。トゲネズミ類の繁殖生態には未解明の部分が多く、今回の繁殖を契機に技術確立が進むことを期待している」と述べた。