ケナガネズミ 街なかで出没相次ぐ ロードキルも増加 環境省が注意喚起

2023年08月09日

国の天然記念物ケナガネズミ=2019年、奄美大島(参考写真)

国の天然記念物「ケナガネズミ」が民家や商店のある街なかに出没する事例が相次いでいる。今年に入って奄美市名瀬の市街地で13件、瀬戸内町古仁屋近辺で3件の目撃や保護、死体の回収事例があった。交通事故(ロードキル)とみられる死亡例もあり、環境省は夜間の運転に注意を呼び掛けている。

 

ケナガネズミは奄美大島と徳之島、沖縄本島だけに生息する固有種。体長が20~30センチとネズミの仲間では国内最大で、背中の長い剛毛が名前の由来。尾は胴体より長く、先端側が白い。夜行性で主に木の上で生活し、木の実や昆虫類、カタツムリなどを主食としている。環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類に指定されている。

 

環境省によると、これまでも奄美市名瀬の朝仁町や朝戸トンネル付近で目撃や死体回収があったが、今年は特に市街地での出没が増加しているという。同省が2023年1月から7月末までに確認している死体回収または保護後の死亡事例は、名瀬市街地の平田町、安勝町、港町、塩浜町などで9件、瀬戸内町古仁屋で1件で、うち3件がロードキルと判明した。

 

また両地域での目撃・保護事例は計6件で、民家のトイレやベランダで見つかった例もある。奄美市名瀬の繁華街「屋仁川通り」のコンビニエンスストアでは7月24日、店内のネズミ捕りわなにケナガネズミがかかり話題となった。保護した個体はいずれも状態を確認後、山に放獣されている。

 

街なかでの出没が増えている理由として、マングース防除やノネコ対策などの外来種対策の効果が出ていることや、昨年のドングリの豊作などで個体数が増加傾向にあることなどが考えられるという。環境省は夜間の安全運転と野生動物を素手で触らないよう呼び掛けるとともに、▽侵入口となる家屋の隙間をふさぐ▽粘着式ネズミ捕りではなく、ケナガネズミが入らない小さなかご式わなを使用する─といった配慮を求めている。

 

環境省奄美群島国立公園管理事務所の阿部愼太郎所長は「ケナガネズミは希少種ではあるが街のすぐ近くの森に生息しているため、個体数が増えれば人の前に現れることもあるかもしれない。そっと見守ってほしい」と話した。

 

ケナガネズミなど希少種の死体を見つけた場合や、屋内から出ていかない場合、誤って捕獲した場合などは関係機関へ連絡を。

 

連絡先は▽環境省奄美野生生物保護センター・電話0997(55)8620/電子メールRO‐AMAMI@env.go.jp▽奄美市教育委員会・電話0997(54)1210▽瀬戸内町教育委員会・電話0997(72)3799