シラヒゲウニの種苗生産に初成功 奄美群島水産振興協 安定的な手法確立へ

2022年09月10日

種苗生産を担当する栄さん=9日、瀬戸内町の瀬戸内漁協

濃厚な甘味が特徴で、夏の味覚として親しまれてきたシラヒゲウニの資源回復に向け、奄美群島水産振興協議会(奄水協)はこのほど、瀬戸内漁業協同組合で実施してきた卵からふ化させ稚ウニを確保する種苗生産実証実験に初めて成功した。確保した稚ウニは現在、最大で約5㍉に成長。今後は奄美の気候に適した生産手法の確立を目指す方針だ。

 

シラヒゲウニは奄美群島では2013年度以降漁獲が激減し、17年度を最後に水揚げがない。資源回復に向け奄水協は18年、県に協力を要請。公益財団法人かごしま豊かな海づくり協会(垂水市)から提供を受けた稚ウニ(約10㍉)の放流事業と並行して、20年度からは奄美群島振興開発(奄振)事業の交付金を活用し、奄水協から委託を受けた瀬戸内漁協が試験的な種苗生産に取り組んできた。

 

瀬戸内漁協によると、実証試験は親ウニから卵子と精子を取り出し、人工受精してふ化した幼生を、稚ウニまで育てる試み。県水産技術開発センターの指導や海づくり協会での研修を通じて技術向上を図りつつ、これまで12回の実証試験を実施してきたが、水質や水温、使用する卵の質などに問題があり、幼生から稚ウニに成長する過程で死滅していた。

 

同漁協は大きさや形のそろった卵を使用し、ろ過装置の導入による水質の安定や水温を25度に保つ工夫を重ねるとともに、1回当たりの餌の量を調整するなど、条件を変えて試験を実施。今年6月27日から開始した13回目の試験で、7月27日に稚ウニを確保することに成功した。

 

現在は稚ウニを大型の水槽に移して中間育成を進めている。個体は無数にあり正確な数量は不明だが、大きいもので5㍉まで成長しているという。

 

同漁協でシラヒゲウニの種苗生産を担当している栄陽樹さん(34)は「種苗生産の手法が確立されている県本土と奄美は、気候、条件、施設規模も違う。何が原因で失敗しているのかも分からず手探りで試験をしていたので、今回稚ウニを確保でき、うれしい。奄美での種苗生産の第1歩になれば」と話した。

 

奄水協は23年度末までに再度、同条件での実証試験を実施するとともに、奄美の気候に適合した安定的な種苗生産のマニュアル作成などの取り組みを進める方針だ。

シラヒゲウニの種苗生産実証試験で確保し、約5㍉に成長した稚ウニ=9日、瀬戸内町の瀬戸内漁協