マングース駆除20年、最終段階に 奄美大島、「根絶宣言」へ新計画

2021年02月24日

世界自然遺産

奄美大島で捕獲されたマングース

奄美大島で捕獲されたマングース

 環境省は奄美大島で進める特定外来生物マングースの防除事業で、2021年度から5年間の新たな実施計画を打ち出した。約3年にわたってマングースの捕獲がなく、同省は「島全域で根絶の可能性が高くなっている」と手応えを示す。モニタリング調査のデータなどから根絶を確認する手法を確立し、早ければ23年度の「根絶宣言」を目指す。希少動物を襲って生態系に大きな打撃を与えたマングースへの対策は、駆除の本格化から20年を経て最終段階に入った。

 

 奄美大島のマングースは1979年に毒蛇ハブやネズミの駆除を目的に奄美市名瀬で約30匹が放され、急速に分布域を拡大。推定生息数はピーク時に1万匹まで増えた。危機感を抱いた地元有志が89年、奄美哺乳類研究会を立ち上げて調査を進め、マングースによる在来生物への影響に警鐘を鳴らした。

 

 環境省は2000年に本格的な駆除に着手。05年施行の外来生物法に基づく特定外来生物に指定し、奄美大島の防除実施計画を策定。同年に捕獲を担う奄美マングースバスターズを配置し、根絶に向けた防除事業を進めた。

 

 奄美大島での捕獲総数は約3万2000匹に上る。初期の01年度に3000匹以上だった捕獲数は、事業の進捗(しんちょく)に伴い次第に減少。07年度に1000匹を下回り、14年度以降は100匹以下で推移。18年4月に1匹がわなに掛かって以降、捕獲がゼロの状態が続く。探索犬による探索作業や、島全域に設置された自動撮影カメラによるモニタリング調査でも痕跡が確認されなくなった。

 

 同省は「奄美大島のような大きな規模の島嶼(とうしょ)でマングースを根絶した事例は世界的にも無く、達成すれば外来哺乳類防除の大きな成果となる」と手応えを示す。一方、現行の計画では、確実に根絶したと判断するための技術や方法の検討は十分でなく、科学的に評価する手法の確立が課題となった。

 

 残された個体がいれば、再び増殖する恐れもあることから、同省は22年度の「根絶宣言」を目標に掲げた13年度から10年間の第2期計画を切り上げ、根絶を慎重に確認するための新計画へ舵を切った。

 

 新計画では22年度までに、島全域で捕獲用のわなや探索犬、自動撮影カメラを使ったモニタリング調査でデータを収集し、これまでの捕獲実績と合わせて根絶したかどうかを解析する手法を構築。最終年度の25年度までに「根絶宣言」を行う方針。

 

 マングースが生息する沖縄島などから船舶の物資にまぎれて再侵入するのを防ぐため、港湾管理者と連携した監視体制の構築を進める。計画期間中にマングースの生息が確認された場合は、モニタリングなど通常の作業を中断し、生息確認地域で集中的に捕獲を行う。

 

 環境省奄美群島国立公園管理事務所の阿部愼太郎所長は、マングースによる生態系への影響を指摘した奄美哺乳類研究会の発起人の一人。同省では01年から6年間、奄美大島で自然保護官を務め、バスターズの結成など初期の防除に尽力した。

 

 阿部所長は「学者から『根絶は無理だからやめておいたほうがいい』と言われる中での船出だった。ここまで来たと感慨深いものがある」と振り返り、「夜の山に通うと会える動物が多くなったと実感できる。在来種は明らかに回復している」と手応えを語る。

 

 根絶の実現へ「バスターズとともに、(根絶確認の)評価に耐えうるモニタリングデータを粛々と積み上げていくことが大切だ」と力を込めた。

 

マングースの痕跡を確認するバスターズのメンバーと探索犬

マングースの痕跡を確認するバスターズのメンバーと探索犬