三太郎線、夜間の混雑緩和に手応え 規制導入1年、「地元枠」新設検討へ 奄美市住用町

2022年10月29日

世界自然遺産

実証実験で「地元枠」利用者に聞き取り調査を行う関係者=9月25日、奄美市住用町

夜間に野生生物を観察するナイトツアーの増加を受けて、奄美市住用町の市道三太郎線周辺で台数制限などの車両規制が導入されて29日で1年が経過した。利用を予約制にして一方通行にしたことで、環境省は混雑の緩和に手応えを示す。現在は利用が集中する繁忙期に、地域住民限定の「地元枠」の設定など、新たなルールの検討が進む。同省は「地元の人やガイドの意見をできるだけ反映して、うまく制度を運用していきたい」としている。

 

三太郎線周辺はアマミノクロウサギなど希少な生き物が多いナイトツアーの人気スポット。車両規制は奄美・沖縄の世界自然遺産登録に伴う観光客の増加を見据えて、希少動物のロードキル(交通事故死)や、車の追い越しをめぐるトラブルの防止などが目的。官民の関係機関でつくる夜間利用適正化連絡会議が昨年10月に試行的に導入した。

 

環境省によると、三太郎線に計数器を設置して行っている交通量調査では、月ごとの一晩の平均車両台数(9月末現在、速報値)は、規制導入後では今年3月が14・9台で最も多く、前年同月とほぼ横ばい。次いで今年8月は14・4台と、世界遺産登録を受けてこれまでで最多となった前年同月の26・8台の半数程度にとどまった。

 

三太郎線では例年、帰省客や観光客が増える春、夏ごろに利用者が集中する傾向がみられる。同省は「新型コロナウイルスの影響もあり一概には言えないが、事前予約制やUターン禁止としたことで、混雑が緩和されている可能性がある。少しずつ(制度の)認知度も高まっている」としている。

 

地域住民や観光ガイドの要望を受けて検討している新ルールは、繁忙期に1日1組の「地元枠」を設け、現行で東西の両入り口から30分ごとに1台としている車両台数を、多人数グループに対応するため、2台まで同時に通行可能とするもの。

 

9月のシルバーウイークに行った新ルールの実証実験では、台風接近の影響もあり、「地元枠」の利用は9日間のうち1台のみと伸び悩んだ。地元住民からはウェブサイトなどからの予約が必要なため、「高齢者には難しい」という声も上がった。

 

環境省奄美群島国立公園管理事務所の阿部愼太郎所長は夜間の車両規制について、「他の林道にナイトツアーの車両が入っていることもある。三太郎線の調整だけでいいものか、考慮しないといけない」と指摘する。新ルールの導入は「実証実験の結果を分析して、追加で実験をするかどうかも含めて検討する」と述べた。