沖縄の先進事例学ぶ 建設業者が自然遺産研修会 徳之島

2022年10月05日

世界自然遺産

沖縄での取り組みを紹介する長嶺さん=3日、徳之島町

徳之島の建設業関係者が受講する世界自然遺産研修会が3日、徳之島町の徳之島建設会館であった。島内の建設業関係者ら44人が参加。講師に沖縄県で自然保護活動に取り組む獣医師の長嶺隆さん(59)を迎え、沖縄での先進事例を学ぶとともに世界自然遺産の島を守るための開発、整備の在り方を探った。

 

研修会は「島の宝を守るために建設業者ができること」をテーマに、島内で環境保護活動に取り組むNPO「徳之島虹の会」と徳之島建設業協会が共催した。

 

長嶺さんは沖縄県うるま市出身で日大獣医学部卒。2005年にNPO「どうぶつたちの病院」を設立し理事長を務める。ヤンバルクイナやイリオモテヤマネコなどの希少野生動物の保護活動に取り組む一方、地元建設業者らとともに希少動物に配慮した整備事業の推進にも関わってきた。

 

長嶺さんはヤンバルクイナのヒナなどの希少動物が道路脇の側溝に落下し脱出できずに衰弱死する問題を挙げ、側溝の外側を動物がはい上がれるこう配に改良した工法を紹介。「クイナの生態を調べてきた私たちと道路を造る建設業の人たちが協力したおかげで完成できた」と経緯を説明した。

 

さらに長嶺さんは「沖縄の例をそのまま徳之島で実践しても保護する動物が違うのでうまく機能しない。地元の人たちが協力して知恵を絞ることが重要」と強調。「徳之島の自然を守る新しいアイデアを生み出して受注や雇用創出につなげてほしい」と関係者の奮起を促した。

 

研修会に参加した同協会の文元敏博会長(68)は「同じ世界自然遺産地域の先進事例を学ぶ良い機会になった」と感想を話し、「世界自然遺産に登録され、単に住民の利便性だけでなく環境にも優しい工事が求められている。今後も行政や虹の会などと協力しながら自然と開発の共存を実現したい」と表情を引き締めた。