奄美大島いきものがたり

2024年04月18日

◎さまざまな環境で観察される ミゾゴイ

ミゾゴイ

奄美大島には、種類・数ともに豊富な渡り鳥がやってくる。繁殖を目的とした夏鳥や、越冬のためにやってくる冬鳥など、目的はさまざまだ。

春になると、旅鳥の一種、ミゾゴイも渡ってくる。旅鳥とは南北を移動する途中に、一時的に立ち寄る鳥のこと。春と秋に見られるヤツガシラもそうだ。

ミゾゴイはあまり知られた存在ではないものの、環境省レッドリスト2020では、絶滅危惧Ⅱ類(VU)に選定されている希少種だ。島では4~6月頃の観察記録が多い。さまざま環境で観察される。自然度の高い林道で見かけたかと思えば、海沿いの県道沿いにいることもある。数年前には市街地の人家の庭で衰弱した個体が保護されたこともある。

実は私、このミゾゴイとはあまり縁がない。奄美大島で2回、喜界島で1回観察したのみである。いずれの場合も、他の鳥を探しているときにぱっと現れ、あっという間に逃げられた。写真は喜界島で撮影したこれしか持っていない。今年こそはじっくり観察したいと思っている。果たしてどうなるだろうか。

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◎可憐な花ゆらゆら ヒメトケンラン

ヒメトケンラン

奄美大島には約1500種の維管束(いかんそく)植物が分布している。これにシダ植物や外来植物を含めれば、相当数が見られることになる。

梅雨頃に開花するランの仲間に、ヒメトケンランがある。森林内の薄暗い環境に生育している。葉は濃い緑色のものが1枚つき、白色の斑紋がある。花が咲く前から花茎がすーっと上がり、梅雨頃から黄色くて可憐(かれん)な花を咲かせる。

この時期に森の中を歩いていると、意外と容易にヒメトケンランは見つけられる。ただ、長い花茎に小さな花をつけているため、常にゆらゆら揺れていて撮影は難しい。そして、必ずやブトゥ(ブユ・ブヨ)に付きまとわれる。同行者と共に、何カ所も刺されたことがある。

 フィールドワークに出ていると、お目当ての動植物を観察・撮影しているときに充実感を感じるのは当然のことだが、その道中に発生した痛み・痒(かゆ)みを伴う出来事や、大きなハブに遭遇したり、道に迷ったりした時の方が印象深い思い出として記憶に残っているものだ。

(奄美博物館)