海を越え約1千㌔の旅 三重・伊勢市の海岸で発見 龍郷小児童が半月前にマーキング アサギマダラ

2018年05月09日

約1千㌔離れた奄美大島から渡ったアサギマダラ=5日、三重県伊勢市(半田俊彦さん提供)

約1千㌔離れた奄美大島から渡ったアサギマダラ=5日、三重県伊勢市(半田俊彦さん提供)

 奄美大島から北上し、三重県伊勢市に渡ったアサギマダラが今月5日に見つかった。アサギマダラは龍郷町立龍郷小学校(橋口俊崇校長、児童26人)の児童らが同校で4月19日にマーキングして放したうちの1匹。およそ半月の間に、海を越えて約1千㌔を旅したことになる。

 

 アサギマダラは季節に合わせて日本列島を長距離移動するチョウとして知られ、研究者らが個体の羽に捕獲場所や日付を記入して放し、移動ルートなどを調査するマーキングの取り組みを行っている。

 

 同校では環境教育の一環で10年以上前から、本州から南下する秋頃に毎年マーキング活動に取り組み、チョウの生態や飛行ルートなどを学んでいる。17年度に活動が評価され、野生生物保護功労者表彰の環境大臣賞を受けた。

 

 南下に加えて、北上する春頃のマーキングを今年は本格化。3月下旬から5月上旬にかけて、校庭の花壇に植えたスイゼンジナ(ハンダマ)の蜜を吸いに集まったアサギマダラを捕獲し、約300匹にマーキングして放した。

 

 龍郷小から渡ったアサギマダラを見つけたのは、環境省志摩自然保護官事務所のアクティブレンジャー半田俊彦さん(42)=三重県鳥羽市。伊勢市の海岸で5日午後3時ごろ、海浜植物のスナビキソウの調査中にマーキングされたアサギマダラを見つけた。

 

 羽に龍郷小を示す「たつごう小 あまみ」、日付の「4/19」と記されていたことから、同小に連絡。通し番号の「29」から、橋口校長がマーキングした個体と分かった。

 

 半田さんは「まさかそんな遠くから来ていると思わなかった。小さなチョウが長距離を飛んだことに感動した」と喜び、「南下は長距離を一気に飛ぶが、北上は繁殖を繰り返してだんだん移動すると思っていた。伊勢志摩では秋によく見られるが、春に北上する個体は珍しい」と話した。

 

 龍郷小4年の川口大海君(9)は「『頑張って飛んでいってね』と放した。自分が放したアサギマダラがどこかの島で見つかったらうれしい」と期待する。橋口校長は「子どもたちが活動する機会を増やして探求的な学習につなげ、環境保全にも視野を広げたい」と語った。

捕獲場所や日付、名前をマークしたアサギマダラを放す児童ら=2018年4月(提供写真)

捕獲場所や日付、名前をマークしたアサギマダラを放す児童ら=2018年4月(提供写真)