鹿児島・沖縄の糖業―迫られる変革⑤ 喜界・生和、季節工頼み脱却 徳之島・南西は人事見直しも

2024年09月11日

特集【コラム】

各製造工程を監視・操作する工場内の集中制御室。生和糖業は2000年以降、段階的に機能の集約を進め、21年には1室にまとめた=8月5日、喜界町

奄美群島内の製糖5社6工場のうち、喜界島、徳之島、沖永良部島の3社4工場は従来からの3交代制を維持する。ただし、いずれも島の働き手減少は避けられぬと見ており、工場内の省力化や、1人が複数工程の対応能力を備える多能工化などを進めている。製糖期人員の安定確保を念頭に、社員の人事制度を見直した会社もあった。

 

喜界島の生和糖業喜界工場は20~30年前から工場内で隣接工程の統合を進めてきた。そして2021―22年期には、全工程の監視・操作機能を集中制御室に集約した。工員は、工場内情報を共有する無線機とタブレット端末を持ち、状況に応じて現場に出向く。

 

生和糖業はこの20年で、製造分野は社員も季節工も大幅に減らした。吉田克成総務部長は「人員削減には反発もあったが、いかんせん島の人口は減っていく。高い給料を払うことで、会社は採用できたとしても運送など関連分野で人がいなくなればキビ産業という全体が動かなくなる。会社の中で頑張って対応することで、他の分野に人を回せるのではないかということも考えて進めてきた」。

 

現在社員42人。山倉正和工場長によると、23―24年期の製造部門は社員30人、季節工3人。季節工は約30年前までは約100人、約20年前は約30人だったという。

 

一方、季節工に頼らぬ製糖は、社員の負担増を伴う面もある。吉田総務部長は「多能工育成という点は苦労している。従来は特定の分野を深くという形だったが、今は広くさまざまな部門にある程度対応できる人材を育成していかなければならない。突発的なことが起こった時に対応できる人材は、まだ限られている」。山倉工場長によると、洗缶や原料投入などの外注先確保も年々難しくなり、社員が対応せざるを得ない分野が広がっていく傾向にある。

 

生和糖業は今、島の農地集約の促進にも力を注いでいる。キビ農家や輸送事業者の減少を見越した取り組み。吉田部長は「基幹作業を引き受ける農家や集荷事業者の効率化につなげたい」と話した。

 

サトウキビ畑に囲まれた南西糖業伊仙工場。煙突には「キビと共に生きる」の文字=7月3日、伊仙町

徳之島の南西糖業は伊仙、徳和瀬の2工場体制。23―24年期は農務部門含め季節工として100人採用した。徳之島事業本部の浜口正仁総務部長は「季節工は年々集めづらくなっている。前期は7人欠員でスタートし、解消できずに終わった。社員(嘱託など含め約90人)はいるので、今は何とかなっているが、島の人口は減っていく。労働力も減る」と厳しく見通す。

 

同社として力を入れているのは、工場の完全自動化。政府の働き方改革支援事業なども活用して5年前に着手。社員を親会社の精製糖メーカーに派遣し、ノウハウの取得を進めている。

 

人事制度の見直しも順次進めている。例えば24年度は定年退職日を変更した。従来は3月31日付だったが、今年度の満60歳到達者から次年度の5月31日付とした。同社の定期人事異動は製糖期を避けた6月1日付。そうすることで、再雇用契約も6月1日からとなり、「製糖期の戦力確保という点では大きい」と浜口部長。

 

沖永良部島の南栄糖業も工場の完全自動化を図る計画。多能工化の取り組みも進めている。沖永良部は1990年代、病害虫のまん延や秋台風の襲来でキビ収量が低迷。同社は親会社の経営破たんもあり、存続の危機に直面した。その後、島挙げての支援を受け再興。現在はキビの収穫面積、収量とも低迷期の2倍。最大13億円あった債務は7年ほど前に解消し、設備改修を順次進めている。

 

現在社員36人。前製糖期は農務部門含め季節工を島内で43人採用した。来期に向けた採用は7日開始。武吉治社長は「季節工は、今のところ、島の中では冬場の比較的いい稼ぎ仕事という捉え方がされていると思う。社員はバランスを考えながら、増やしていきたい」と語った。