奄美時代初期の作品初公開 田中一村記念美術館
2019年06月16日
芸能・文化
奄美で69年の生涯を終えた孤高の日本画家、田中一村の未発表作品が新たに5点見つかり、20日から奄美市笠利町の県奄美パーク・田中一村記念美術館で一般公開される。宮崎緑館長は「表現や筆使い晩年の作品の萌芽(ほうが)が見える。奄美で画風を確立するプロセスを知る上でも重要な作品で、今後の一村研究を進める鍵になる」と期待した。同館は多くの来場とともに、生前の一村や作品に関する情報提供を呼び掛けている。
田中一村は栃木県出身。1958年に50歳で奄美大島に移住し、69歳で死去するまで奄美の草花や生き物をテーマに作品を描き続けた。
見つかったのは「岩の上のイソヒヨドリ」と「朝日に松と白梅」(いずれも仮題)の掛け軸2点と、肖像画3点。全て奄美大島出身の個人の所有で、田中一村記念美術館が来年3月末まで借用して調査・公開する。
岩の上のイソヒヨドリは縦127センチ、横35・5センチ。墨の濃淡で表現された荒々しい岩場の上に1羽のイソヒヨドリが止まり、画面の下の方には鮮やかな色彩でハマニンドウとアザミの花が描かれている。
同館の前野耕一学芸員は、一村が奄美に移住した当初の59年~60年5月ごろの作品と推測。「卓越した技とともに新たな表現方法への挑戦も伺える」と評価した。
肖像画は、依頼を受けた一村が画用紙に鉛筆で所有者の親族を描いたもの。60年4月と記されている。一村は奄美へ来る以前から写真を基に肖像画などを描いており、奄美でも複数の作品が残されているという。
同館は「個人から依頼されて制作した未発表作品がまだ島内や県内に残っているのでは」として、情報を集めている。
田中一村記念美術館は年に4回、作品を入れ替えながら常時約80点を展示している。今回見つかった5点の一般公開は20日から9月17日までと、年末~3月末頃までの予定。