「生きた言葉」学び伝える アイヌ語継承者・関根摩耶さん(奄美3世) きょう「方言の日」

2022年02月18日

芸能・文化

危機的な状況にある言語・方言サミット(奄美大会)に参加した関根さん=2020年2月、奄美市名瀬

奄美にルーツを持つアイヌ語継承者がいる。インターネットなどを活用し、若者ならではの視点でアイヌ語やアイヌ文化を発信している関根摩耶さん(22)だ。アイヌ語と奄美方言は国連教育科学文化機関(ユネスコ)が消滅の危機にあるとする言語。話し手が少なくなっている中、「生きた言葉」としてアイヌ語を学び伝える関根さんに、これからの言語継承の在り方について聞いた。

 

■消滅危機言語

 

関根さんは祖父が瀬戸内町古仁屋出身の奄美3世。自身は人口の7~8割がアイヌ民族という北海道の平取町二風谷でアイヌ民族の子孫として生まれ育った。

 

アイヌ文化に関わる仕事をなりわいとする家族の影響でアイヌ語を耳にする機会が多かった関根さんだが、普段の生活で使っていたのは主に日本語。ユネスコが定める指標によると、現在アイヌ語は消滅危機の度合いが最も高い「極めて深刻」な状態にあるとされている。

 

アイヌ語を学ぶことで、アイヌ民族ならではの自然に対する向き合い方や言葉の奥深さなどについて理解が深まったという関根さん。2018年からは、より多くの人がアイヌを知るきっかけをつくろうと、動画投稿サイト「ユーチューブ」での発信を始めた。

 

動画では、初心者にも分かりやすい内容でアイヌ語やアイヌ文化を紹介。冒頭のあいさつ「イランカラプテ」は日常で使う表現だが、「あなたの心にそっと触れさせてください」という意味もあるという。

 

アイヌ語は文字を持たない言語。関根さんは「文字という制約がないからこそ過去にとらわれない自由さがあり、ユーモアあふれる多様な表現が生まれる」と語る。

 

■時代の変化に対応

 

関根さんによると、近年アイヌ民族の血を引く若者たちの間でアイヌ語を学ぼうという意識が高まり、日常会話にアイヌ語を交えて話す光景が見られるようになったという。「言葉は流動的。文字があっても時代に合わせて変化している」と関根さん。「アイヌ語も時代に合わせて新しい言葉をつくっていかないと」と生きたアイヌ語の継承に取り組んでいる。

2020年2月、関根さんは奄美市で開催された「危機的な状況にある言語・方言サミット」にアイヌ語話者として出席。アイヌ語継承の活動などについて発表し、奄美の人たちとも親睦を深めた。

 

関根さんは当初「言葉が無くなるのは自然の摂理、仕方がない」と考えていたが、アイヌ語を学び伝える中で「その言葉にしか表せないものがあり、多様な言語の豊さに気付いた」「ルーツがある奄美や奄美方言についても改めて意識するようになった」と話す。

 

■若者が使える環境を

 

ユネスコによると、奄美方言の消滅危機の度合いは「危険」。方言を話す人の高齢化により、若い世代が島言葉を耳にする機会が少ないのが現状だ。

 

島言葉の保存・継承を目指し、奄美群島では2月18日を「方言の日」とし、子どもたちによる島口劇や島言葉に関するイベントの実施など、例年さまざまな取り組みが行われている。

 

古里の言葉を残していくには、若い世代が生きた言葉として日常で気軽に使える環境が求められる。関根さんは「これからのアイヌ語・奄美方言の継承には、仕事や生活に役立つという需要をつくっていくことが大切」と語った。