厳かな演舞を奉納 五穀豊穣、島内安全祈願 4年ぶり通常開催でにぎわう 与論十五夜踊り

2023年09月30日

芸能・文化

旧暦8月のみ行われる「獅子舞い」で会場を力強く駆け回る獅子=29日、与論町の地主神社境内

旧暦8月15日に当たる29日、与論町の地主(とこぬし)神社境内で国指定の重要無形民俗文化財「与論十五夜踊り」が奉納された。新型コロナウイルス禍を経て4年ぶりの通常開催。演者たちは450年以上続く演目を厳かに舞い、五穀豊穣(ほうじょう)と島内安全を祈願した。

 

与論町誌によると、与論十五夜踊りは1561(永禄4)年に創始。当時の島主が3人の息子に琉球や島内、大和の舞踊を学ばせ、一つの芸能にまとめたことが主な由来とされており、室町時代の狂言などを基にした本土風の「一番組」と琉球風の「二番組」が交互に演目を披露する。毎年旧暦3、8、10月の各15日に奉納され、8月は特に盛大に行われる。

 

午後4時ごろ、一番組と二番組合同の「雨賜(あみたぼう)り」で開幕。一番組の「三者囃子(さんばすう)」や二番組の「この庭」などが続いた。8月のみ行われる「獅子舞い」では、獅子が来場者たちに噛みつきながら駆け回り、会場を盛り上げた。

 

綱引きもあり、参加した人たちは引っ張って切れたわらの縄の一部で互いをたたき合って厄を払った。最後は全員で「六十節」を踊り、にぎやかに行事を締めくくった。

与論十五夜踊り保存会の市村博司会長は「みんなが踊っている姿を見てうれしい限り。最高でした」と笑顔。授業の一環で見学した与論中2年の椛山奈夏さん(14)は「少し言葉の意味を理解できて面白かった。島の伝統について知らないことが多いのでもっと調べてみたい」と話した。

 

会場では4年ぶりに飲食物が振舞われたほか、月見イベントや地元ミュージシャンのステージなども初めて催され、親子連れや観光客など多くの人でにぎわった。