旧石器時代から食用か 1万7千年前のクロウサギの骨発見 天城町・下原洞穴遺跡

2023年07月06日

芸能・文化

約1万7千年前の炉の跡について説明する天城町立ユイの館の奥綾那さん(左)と具志堅亮さん=5日、天城町の同館

天城町西阿木名の下原(したばる)洞穴遺跡で約1万7千年前のものとみられる炉の跡が発掘され、国の特別天然記念物アマミノクロウサギの骨などが見つかった。5日、歴史民俗資料館「天城町立ユイの館」で報道向け発表があり、同館学芸員の具志堅亮さん(39)は「後期旧石器時代から縄文時代への移行期に当たる時代の遺物。長年人々がクロウサギを食べていた証拠になる」と説明した。

 

下原洞穴は鍾乳洞の天井が崩れ落ちてできたドリーネと呼ばれるくぼ地の壁に開いている洞窟。遺跡は旧石器時代から縄文時代のものとみられ、2016年に調査が始まり、3万~3600年前の遺物1万点以上が発掘されている。

 

今回発見された炉の跡は22年3月に発見したもの。最初に発掘した約1万4千年前の炉の跡から約20センチ下層で発見した。炉の中からは火の影響で黒色に変色したクロウサギやネズミなど小型哺乳類の骨が見つかり、炭化物の年代測定で約1万7千年~1万6800年前の遺物と分かった。

 

琉球列島の先史時代では人が暮らしていた痕跡が発見できない約2万年前から7千年の期間があり、「空白の1万年」と呼ばれている。下原洞穴ではこの空白を埋める発見が相次いでおり、これまでにも約7千年前に食用とされた痕跡のあるクロウサギの骨が見つかっている。

 

さらに22年11月に洞穴前面の斜面を調査したところ、洞窟の一部が崩落した琉球石灰岩の巨石(直径約3メートル)を発見。巨石を撤去して石の下を発掘したところ約1万年~9千年前のものと見られる波状条線文土器と呼ばれる土器の破片100点以上が発見された。破片は大きく資料として良好な状態。深鉢形、つぼ型などさまざまな形があることが分かったほか、注ぎ口とみられる破片やイノシシの足に似せたような装飾の跡も見つかった。

 

下原洞穴で見つかる遺物は約3万年前~3500年前と幅広く、具志堅さんは「地球全体が寒冷期から温暖になっていく時期が含まれ、気候に合わせて当時の人々がどのように生活を変えていったかを知る資料になる」と解説。「今後もっと古い時代の遺物が見つかり新しい発見につながる可能性がある」と期待した。

 

町と町教委は同遺跡が町初の国指定史跡となることを目指しており、今回の発掘の成果は今年度中に報告書としてまとめる。今月8日には鹿児島市の鹿児島大学稲盛会館で同遺跡についてのシンポジウムを開く予定。同館学芸員の奥綾那さん(27)は「今回の発見について詳細に知りたい人はぜひ来場してほしい」と呼び掛けた。