資料をデジタル化、保存へ 今年度は写真フィルム8万3千点 調査研究の活発化に期待奄美博物館

2024年05月28日

政治・行政

2024年度にデジタル・アーカイブ化を進める奄美博物館収蔵の写真フィルム=17日、奄美市名瀬

奄美市立奄美博物館は2024年度から3年間で、所蔵する資料のデジタル・アーカイブ化(デジタル化し保存)を進め、インターネット上で公開する。貴重な文化資源の情報を恒久的に保存し、有効活用するのが目的。デジタル化した資料をネット上に公開することで市民が閲覧しやすくなるほか、島外の研究者らも情報に触れやすくなり、奄美関連の調査研究活発化も期待される。

 

奄美市は新規事業として、博物館デジタル・アーカイブ基盤整備事業1045万4千円を24年度一般会計当初予算に計上。今年度は市文化財課が保存・管理する資料のうちの写真フィルム約8万3千点と、市指定文化財で幕末期の奄美大島を記した地誌『南島雑話』(写本)のデジタル・アーカイブ化に取り組む。

 

国内では2011年の東日本大震災以降、災害から貴重な文化財や資料を守るため、博物館資料などをデジタル・アーカイブ化する動きか活発化。博物館法が改正され、23年4月1日には博物館資料のデジタル・アーカイブ化が努力義務となった。

 

奄美博物館によると、資料のデジタル保存とネット上への公開で①博物館資料(情報)に気軽にアクセスできるようになり、市民の学習活動や研究者らの調査研究活動に有効活用できる②博物館内部でも資料の情報が整理されるため管理が効率化し、活用しやすくなる③万一の自然災害や、年数経過に伴う資料の劣化による情報損失を防ぐ―などの効果がある。

 

今年度にデジタル化する写真フィルムは、博物館職員が撮影したり、博物館に寄贈されたりしたものなど、ポジフィルム約4万9千点と、ネガフィルム約3万4200点。博物館が開館した1987年以降に撮影された写真が大半だが、中には現在は見られなくなった地区の伝統行事やノロの祭祀(さいし)の様子など、貴重な写真も多く含まれている。

 

同博物館の平城達哉学芸員(32)は「写真フィルムの一部はすでに劣化が始まっている。貴重な写真も多数含まれており、せめてデータだけでも恒久的に保存できれば。今後の調査研究や教育活動に、より一層生かしてもらえるよう、この3年間でしっかりとデジタル・アーカイブ化を進めたい」と話した。

 

デジタル・アーカイブ基盤整備事業は公募型プロポーザル方式で委託事業者を決める。募集はすでに締め切り、今月30日にプレゼンテーション審査で契約候補者を選定する。

25、26年度はデジタル・アーカイブ化した写真資料や博物館所蔵資料、動植物データベース、奄美関係の文献などのネット上への公開を予定している。