奄美は計36カ所 群島各地に指定候補区域 安保土地規制

2023年05月14日

政治・行政

重要土地等調査法で、特別注視区域指定候補地の一つとなった陸上自衛隊奄美駐屯地=2019年3月17日、奄美市名瀬大熊(本社無人機で撮影)

国境離島や米軍、自衛隊施設周辺などの土地取引を規制する「重要土地等調査法」に基づく政府の区域指定の候補地に、奄美群島の島々と、群島内の自衛隊施設が入った。奄美群島内の指定候補区域は計36カ所。政府は各自治体の意見聴取を経て、8月にも指定を決める方針。

昨年9月施行の同法では、政府が自衛隊や原発施設、空港など安全保障の上で重要だと判断した区域の土地や建物の利用状況を調べ、持ち主を調査できる。北海道で中国など外国資本が土地を買う例があり、専門家から安全保障上のリスクを指摘されていた。不適切な目的で日本の土地を取得、利用する恐れを減らす狙い。

政府は昨年12月に第1弾として北海道、東京、長崎など5都道県58カ所を指定。今年2月に運用を開始した。

第2弾で指定候補区域となった奄美群島内の36カ所のうち、特に重要な機能を有する「特別注視区域」候補は自衛隊施設など計7カ所で、「注視区域」候補は龍郷町を除く11市町村の29カ所。具体的な区域は13日現在、非公開となっている。

区域指定を受けた場合、政府は土地所有者の氏名や住所、国籍を調査できるほか、特別注視区域では土地や建物を売買する前に、氏名や住所、利用目的の届け出が必要となる。売買は規制しておらず、土地の利用規制にとどまる。政府は個人情報の保護には配慮し必要最小限度の措置にとどめるとしているが、プライバシーの侵害につながる恐れがあると指摘する見方もある。

指定施設の機能を妨害する行為には中止勧告・命令が可能となり、従わない場合、刑事罰もある。例として自衛隊機の離着陸やレーダー運用の妨げとなる工作物の設置、レーザー光の照射を挙げている。

奄美群島の土地買収動向を10年以上調査している姫路大学の平野秀樹特任教授は、群島内の土地取引の現状について「リゾート名目、再生エネルギー開発名目の土地取得の中には目的不明のものがあったり、要衝地を含んだ買収も見受けられる。そうした動きが特にここ数年、奄美諸島では聞かれるようになっている」と指摘。

その上で「安全保障上、重要な国土が島には多くあるということで注目されるのと同時に、買い手は今まで以上にカムフラージュしながら土地を買収していくようになるのではないか。大切な島の土地を将来どう使っていくか、皆で考えていくきっかけにしてほしい」と話している。

奄美ブロック護憲平和フォーラムの城村典文事務局長は「基本的人権の侵害にも関わる問題。法の目的や具体的な調査内容が明確にされない以上、反対する」との見解を示した。

奄美市内の不動産会社担当者は「区域が未公開で不明な部分も多いが、規制がかかれば影響が無いとは言えない」と話した。

政府は第2弾で、10都県40カ所を特別注視区域、121カ所を注視区域の案として提示。鹿児島県内の特別注視区域は海自鹿屋航空基地(鹿屋市)を含む13カ所、注視区域は九州電力川内原発(薩摩川内市)を含む54カ所の計67カ所で、全国最多だった。政府は今後、米軍基地も候補に加え、今年度中に約600カ所の指定完了を目指す。

 

12日の政府「土地等利用状況審議会」後の公表資料で判明した奄美群島内の注視区域指定候補地。

▽奄美市 自衛隊奄美駐屯地、自衛隊奄美大島分屯基地、奄美大島(一)(二)、奄美海上保安部▽大和村・宇検村 自衛隊名音中継所▽宇検村 奄美大島(三)▽宇検村・瀬戸内町 奄美大島(四)▽瀬戸内町 自衛隊瀬戸内分屯地、自衛隊奄美基地分遣隊、古仁屋海上保安署=奄美基地分遣隊が特別注視区域の指定事由、古仁屋海上保安部、請島・ジャナレ島・木山島(一)(二)、与路島(一)(二)▽喜界町 自衛隊喜界通信所、喜界島(二)=喜界島通信所が特別注視区域の指定事由、喜界島(一)~(三)▽徳之島 徳之島(二)~(四)▽天城町 徳之島(一)▽伊仙町 徳之島(五)~(七)▽和泊町 沖永良部島(一)~(四)▽知名町 自衛隊沖永良部島分屯基地、沖永良部島(五)(六)▽与論町 与論島(一)~(三)