海保最新鋭測量船「光洋」 幻となった国内初の一般公開 17日に事前公開

2023年11月23日

政治・行政

名瀬港観光船バースに停泊する海保大型測量船「光洋」=16日、奄美市名瀬

奄美海上保安部(樋口則一部長)が18日に奄美市の名瀬港観光船バースで予定していた海上保安庁所属の大型測量船「光洋」(約4千トン)の一般公開は、強風のため中止となった。2021年3月に就役した同船は20年1月就役の同型船「平洋」と並び海保最大かつ最新の測量船で、一般公開されれば国内で初めてだった。17日に関係者向け事前公開があり、造船の背景や測量船としての特徴などを紹介する。

 

◆背景に海洋権益◆

 

光洋は16年12月に関係閣僚会議で決定した「海上保安体制強化に関する方針」に基づき平洋と共に造られた。背景には12年の中国と韓国による大陸棚延長申請があり、日本海や東シナ海における海底の地形や地質情報の取得を主要任務とする。得られたデータは、沖縄トラフまでを自国の大陸棚とする中国、韓国の主張に対抗する科学的根拠となり、日本の海洋権益の確保に貢献する。

 

船名には「光り輝く海、まだ十分に解明されていない海に光を当て、海洋調査を進め、明らかにしていく」という思いが込められている。

 

◆精密なデータ取得◆

 

光洋の主機は、ディーゼル発電機4基による統合電気推進。推進器に360度任意の方向に推進力を向けることが可能なアジマススラスターを採用し、位置や方位、揺れ、気象海象などのデータから自動で船位の定点保持が可能となった。電気推進のため、観測データに影響を与える船体の振動や雑音の防止、長時間の低速度航行にも優れている。

 

主要な調査機器は、広範囲に海底地形を把握し、水深約1万1千メートルまで測れる「マルチビーム測深機」や水中で人工的に強力な音を発して、反射音で海底下の状態を調べる「音波探査装置」、海底下や海底表面の堆積物などを直接採取する「採泥器」など。

 

音波探査装置による深海調査では、海底のさらに下に伝わった音が地層の境界や断層などで反射し、付属の多数の受振器でそれらの音波を拾う長さ3千メートルのストリーマケーブルをえい航することもある。

 

◆船内見学◆

 

17日の事前公開は、海上保安協会奄美支部や海上保安友の会、報道機関が対象で約20人が参加した。運航指揮を行う船の中枢「船橋(ブリッジ)」やすべての観測機器の制御部、データ収録部を集約する「観測室」、調査機器の「実物展示」を見学。最後は海保自慢の「海保カレー」を味わった。

船橋で光洋の山口貢弘船長(右)から説明を受ける参加者ら=17日、奄美市名瀬