高周波で鳥の侵入防止 バードソニック設置、全国2例目 喜界空港

2023年06月09日

政治・行政

滑走路への鳥の侵入を防止する「バードソニック」の操作を説明する辻維周教授(右)と関係者ら=7日、喜界空港

航空機と鳥が衝突する「バードストライク」の防止対策として岡山理科大学の辻維周教授(67)が山梨県の民間企業と共同開発した「バードソニック」が7日、喜界島の喜界空港に設置された。12~15キロヘルツの高周波を複数のパターンで発生させ、半径300メートル、120度の範囲に鳥を近づかせない効果がある。設置は全国で2例目。今年3月、全国で初めて運用を開始した島根県の石見空港では、設置以降バードストライクは発生していないという。県は半年後をめどに効果を検証し、増設や他の空港への展開を検討したいとしている。

 

国土交通省の調査によると、2021年に発生した航空機への鳥衝突件数は全国で1074件。機体の損傷や欠航、遅延が問題となっている。同年の喜界空港での発生は9件で、鳥衝突率(離着陸1万回当たりの換算値)では全国で2番目に多い。県は4月、日本エアコミューター(JAC)と対策を検討し、「バードソニック」の設置を決めた。

 

喜界空港管理事務所によると、飛来するのは主にチドリの仲間で、降雨後に滑走路の水たまりに集まることが多い。100羽以上まとまっていることもあり、パトロール車のクラクションや空砲で威嚇しているが、車が離れると再び滑走路に戻ってくるという。

 

「バードソニック」はソーラーパネルを電源に4基のスピーカーを振動させ、高周波を発生させる。音による対策は動物の慣れが懸念されているが、同装置では周波数や発生パターンを適宜変更できる。風雨、塩害対策も施されている。

 

喜界空港では、滑走路の東端から約300メートルの南側草地に設置。鳥が多く飛来する空港東側から海側にスピーカーを向け、午前7時半から午後6時半を稼働時間とした。

 

設置に立ち会った辻教授は「大切なのは、野生生物が暮らす領域と人間の領域との線引き」と強調。「不必要な駆除を減らすためにも、生き物と人間との接触を極力減らし、それぞれが暮らす場所を示したい」と話した。イノシシやクマの侵入対策となる低周波発生装置や、持ち運び可能な装置の開発なども進めており「今後はツシマヤマネコなどロードキル対策の実証実験も検討していきたい」としている。

 

県は8日、屋久島空港にも「バードソニック」を設置。県内2空港で検証を進める。