6月から無期限休館 指定管理者が撤退 奄美市「施設の在り方を再検討」 タラソ奄美の竜宮

2023年04月27日

政治・行政

6月1日から無期限の休館が決まったタラソ奄美の竜宮=26日、奄美市名瀬

奄美市の健康体験交流施設「タラソ奄美の竜宮」が6月1日から無期限の休館となることが26日、分かった。2006年の開館からウェルネスデベロップメント(東京都、野田史代表取締役)が指定管理を続けてきたが、慢性的な赤字経営に加え、新型コロナの影響で利用者が激減。経営状況の早期改善は難しく撤退を決めた。市は直営での運営などはいったん見送った。再開時期は未定とし、今後の施設の在り方を再検討する方針。

 

タラソの休館は26日に市役所であった市議会全員協議会で当局が報告した。

 

施設は奄美群島振興開発事業の非公共事業を活用し、総事業費10億5千万円で整備した。鉄筋コンクリート平屋建て。海水を利用した温水プールやサウナ、トレーニングルームなどを備え、市民の健康増進や福祉向上の場として、また憩いの場として親しまれてきた。

 

利用者は開館翌年の07年度は10万人を超えたが、その後は徐々に減少。19年度は6万1122人で、コロナの影響を大きく受けた20年度は3万3177人、21年度は2万5183人まで落ち込んだ。22年度は4万2049人に回復したが、コロナ禍以前までの回復は見込めず、同社は今年2月末、市へ指定取り消しを申し出た。

 

無期限休館の判断について紬観光課は「直営を含めた継続的な運営に向けて指定管理者との協議、庁内での協議を重ねてきたが、利用者の安全面や、これまでの運営、利用状況なども考慮し、安定かつ継続的な運営は困難と判断した。今後の施設の在り方については、施設利用者や民間の意見も踏まえ、幅広く検討したい」と説明した。

 

南海日日新聞社の取材に対し、ウェルネスデベロップメントの野田社長は「今まで多くの市民に利用いただき感謝。施設に毎日通われている方たちを思い、継続に向けてあらゆる方策を試みたが、私たちの力ではどうにもできなかった。断腸の思いでの撤退。ご迷惑を掛けて本当に申し訳ない」と話した。

 

同社によると、年会費など「先払い会費等」の返金は5月末までに行う。

 

 

 

「残念」「引き継いでほしい」 利用者からは惜しむ声 タラソ休館受け

 

「誰かに引き継いで続けてほしい」「健康づくりに利用していたので残念」│。運営会社の撤退を受けて5月末で休館する「タラソ奄美の竜宮」の利用者からは惜しむ声が聞かれた。

 

同施設の開業から2023年3月末までの延べ利用者数は110万3337人、延べ会員数は4856人。60代の母と叔母、小学生の子どもと一緒にたびたび利用していたという奄美市名瀬の女性(32)は、「久しぶりに来たら(休館と聞いて)驚いた。家族みんなで一緒に運動できる場所はあまりないので残念。どこかが運営を引き継いでほしい」と惜しんだ。

 

10年以上毎日のように通っていたという同市名瀬の男性(72)は「運動になるし、サウナもジャグジーもあっていい施設。顔なじみの会員たちともここが無くなったら困るねと話していた。これからも通いたいという人はたくさんいると思う」と話した。