ジオパーク認定へ加速 自然と歴史文化との関わりも 喜界島
2019年01月01日
世界自然遺産
隆起サンゴ礁で形成された喜界島で、ジオパークの認定に向けた取り組みが進んでいる。ジオパークとは「地球・大地(ジオ=Geo)」と「公園(パーク=Park)」を組み合わせた造語。町はパーク認定への取り組みと地域振興を連動させていく方針で、2019年2月にも基本構想を策定。推進協議会を設立して具体化を図りながら、20年の日本ジオパーク認定を目指していく。
ジオパークは地形・地質などの自然資源を観察し、その成り立ちを読み解き、そこにある生態系やそこで暮らす人々の歴史や文化との関わりを考えていく場所を指す。日本ジオパークの認定を受けた正会員は18年9月現在44地域で、うち県内では霧島、桜島・錦江湾、三島村・鬼界カルデラの3地域が認定を受けている。
町はジオパークの認定に向け、大学教授や喜界島サンゴ礁科学研究所の研究員、町内の観光、商工会関係者、役場各関係課職員ら16人を委員とするジオパーク基本構想検討会を発足。18年6月に初会合を持ち、同年11月には第3回会合を町役場で開いた。
会合で示された基本構想案では、世界有数の速さで隆起(年間2㍉)するサンゴ礁で島ができていることや、集落景観(サンゴの石垣)やサンゴと共生してきた歴史・文化が密接に関係していることを島の魅力と提唱。ジオパークの活動を通し、地域文化の掘り起こしやサンゴ礁科学研究所などとの連携を図り、島の魅力を内外に発信することで、地域文化の継承、交流人口の増加など地域の活性化につなげていくこととしている。
喜界島は10万年前から現在のサンゴ礁の生態系を学ぶ上で、世界的に希少な島だが、地域住民や観光客がその素晴らしさを十分に理解する場がないのが現状。そのため島全体をジオミュージアムとして捉え、地域住民が主体となった「喜界島サンゴ礁ミュージアム」づくりを実施し、島の自然・文化資源価値の再認識とそれを生かした活性化を図っていく方針だ。
会合では委員から、ジオパークと連動した物産品の開発などで意見やアイデアが出された一方、「新しく施設を整備する際は島の大切な文化財に配慮してほしい」との注文もあった。
ジオパークでは、まずそのジオパークの見どころとなる場所を「ジオサイト」に指定し、多くの人が将来にわたって地域の魅力を知り、利用できるよう保護。その上でこれらのジオサイトを教育やジオツアーなどの観光振興などに生かし、地域を元気にする活動や、そこに住む人たちに地域の素晴らしさを知ってもらう活動を進めていくことを基本としている。
喜界町ではジオサイトの候補地に▽テーバルバンタと呼ばれる高台から見る約6万年前のサンゴ礁段丘▽170万年より前の時代に大陸の河川から運ばれた土砂が大陸斜面より深い環境で堆積して形成された長嶺の島尻層群▽水深50~200㍍に生息する貝類などの化石を観察できる手久津久花尾神社の島棚堆積物▽複数段に分かれた完新世サンゴ礁段丘が観察できる荒木中里遊歩道―などを挙げ、その価値と魅力を紹介する作業を進めていく。
地質学が専門で、基本構想検討会の委員も務める金沢学院大学の佐々木圭一准教授は「喜界島はサンゴが陸上で調査できる世界的にも重要で、魅力的な場所だ。サンゴの化石から過去の気候変動を調べることで、将来を予測することにもつながる」とその希少性に太鼓判を押す。
基本構想検討会の事務局を担当する町企画観光課の富充弘課長は「認定を受けるには厳しい審査がある。今後基本構想をまとめて具体化していくが、ジオパークがどういうものか町民の理解と意識形成が大切であり、ジオガイドの育成なども並行して進めていきたい」と話した。
町では近く新しい島の案内板を設置する。ジオサイト用ではなく、喜界島の特徴を知らせる内容にする方針で、そのタイトル案は「10万年間 浮上を続けるサンゴ礁 喜界島」。取材で案内してもらったテーバルバンタからの景色を眺めながら、自然の雄大さと、人が自然に生かされていることを実感した。10万年の浮上を目で見ることができる島のジオパーク認定に期待したい。